遺伝子の不思議
遺伝子の不思議
同じ遺伝子でも、働き方が違う?[エピジェネティクス]
まずは、用語のおさらいから。
染色体、遺伝子、DNA、ゲノムの違いです。
「DNA」は、DeoxyriboNucleic Acid (デオキシリボ核酸)の略で、化学物質の名称です。
「遺伝子」は、生物細胞内において、ある形質(形態や機能の特質)を発現させ、それを子孫に伝える機能をもつものの総称です。
また、ある生物のもつ全ての遺伝情報のことを「ゲノム」と呼びます。
そして、「染色体」とは、非常に長いDNA分子が、ヒストンなどのタンパク質に巻きつき折り畳まれた構造体のことを指します。
ちなみに、1本のDNAには、複数の遺伝子があり、ここからここまでの塩基配列がA遺伝子、ここからここまではB遺伝子という具合です。
さて本筋の「エピジェネティクス」ですが、これは「DNAにおける塩基配列の変異以外のメカニズムで遺伝子発現を変化させ、細胞や生体に変化を生じさせる現象」と定義されています。
身近な例は一卵性双生児です。
一卵性双生児は、遺伝情報が同じですが、身体的特徴や性格、嗜好、病気の発症や症状の程度に差が見られます。
こころの不調ても、エピジェネティクスの破綻が発症に関わっている可能性が想定されています。
動物実験ではありますが、生後の虐待により、脳の精神ストレス耐性遺伝子である「グルココルチコロイド受容体遺伝子」がメチル化され、遺伝子発現が低下し、将来的に行動の異常が出現することが2004年に報告され、後天性の精神発達障害においても、エピジェネティクスが関連する可能性が示唆されています。
こころの病気の身体的な原因が分かれば、根治的な治療法が開発されるでしょう。
遠い(?)将来、どんな心の不調も、確実に治すことができる時代がやってくるでしょう。
そんな時代になるまで、精神科医は変わらず全力投球です!