★心の病と自動車運転
★心の病と自動車運転
よく車の運転はいいですかと尋ねられる。
基本的に著しい精神運動興奮状態や幻覚妄想状態、著しい抑ウツ状態にでもないかぎり、実際に運転が危険であるという状態は生じないと思われるし、現在までに服薬(大量服薬は除く)や病状により交通事故を起こした例を知らない。
ストレス関連疾患で運転が禁止されるなら、通院中の営業職の多くが職を追われることになる。
当局は、うつ病でも運転の制限をする運用を開始するつもりのようだ。
それに対し精神神経学会は明確に反対を表明している。
一方、製薬会社はいつものごとく歯痒い対応をしらっとしてくれる。
多くの向精神薬の添付文書に、服薬時は運転をしないよう医師が注意することとの文言をいれている。
当局は問題になればいつでも医師の刑事的責任を問うつもりである。
製薬会社は、服薬者が事故を起こしたとき、「添付文書に書いてあるのにも拘らず、運転を禁止する指導をしなかった医師に責任がある」と言わんばばかりである。
医師も事故防止のためにも自己防衛的にならざるを得ない。
即ち、「今まで通常量の服薬で病状が安定していれば問題があった人はいないけれど、お薬の添付文書に運転をさせないように指導するよう書かれているので、それに反した指導はできません。服薬しての運転は許可できません。」となってしまう。
京都のてんかん患者の交通事故以来、世間の目も厳しくなっている。
確かに、患者さんの利便性も大切だが、もし疾患や薬剤の服用が原因でで交通事故を起こして人身が傷害されるようなことはあってはならない。
職種や住居環境にもよるが、病気で服薬しているために運転ができなくなることで、買い物にもいけない、職も失うということになるのは避けられなければならないことである。
しかし、人身事故を起こす可能性が高まっているかもしれない服薬者に、運転を許可していいはずもない。
その可能性が、いくばくのものか明確な研究はないと思う。
明確なエビデンスと運転の許可される具体的検査基準が明示されるまで、「許可できません」と言い続けざるを得ないか?
ただ、運転免許の取得や更新と、運転の許可は別の判断体系に属するもののようであり、これらに関することは、ダブルスタンダードになっているようだ。
益々、分かりにくい。
さてさて、これからどのように説明していくか…
悩むところである。