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ミスフィット

ミスフィット

本多有香「犬と、走る」は微妙な本だ。

読んで脳天気に楽しむことはできない本だ。

著者はやはりミスフィット(エリック・ホファー)だと思う。

善意も、そして悪意さえ本物の世界でしか生きていけない人なんだろう。

普通の社会生活では、仮初の虚構性がなければ生きていけない。

ミスフィットには、それができない。

何気ない善意は、上辺の心地よさはあるにせよ、安住することはできない。

オーストラリアでの人の温かさと癒され体験も、うれしくはあるが留まろうとは考え及ぶことがないのだろう。

極寒のカナダ、悪意さえ本物なんだろう。

そこにミスフィットゆえのフィットが生じるのかもしれない。

その存在すべき居場所の中で、先のことなんか考えないはず。

本人は意識していないかもしれない。

大きな犬ぞりレースに出ることを犬舎で生まれた若い犬を見ながら思いを馳せるとワクワクする、けれども60歳70歳になった存在を考えることはないだろう。

過去も未来も存在せず、

今以外には生きることができないという、

仏教的生き方を無意識に実践している。

日々の悩みはあるにしろ、本質的に苦悩は生じることのない生き方である。

私には、無理かな?

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