不思議な症状…強迫性障害
不思議な症状…強迫性障害
強迫性障害とは、考えてみれば本当に不思議な病気です。
強迫対象以外への判断力が犯されていませんし、許されないときには強迫行為をしないでおれます。
強迫観念は少々強迫行為よりは厄介ですが、火事など身の危険に晒されているような状況では少なくとも停止できます。
それなのに、患者さんは自分ではどのような状況にあっても、「強迫状態はコントロールできない」と確信しているかのように強迫行為や強迫観念を自ら実行します。
自分でも、非論理的なことをしていると認識しているにもかかわらずです。
これが不思議な点であり、治療が難しい要因でもあるのです。
おかしなことをしていて、しかも苦しくなることを自分で選択して実行しているのに、けっして自分からは止めようとしないのですから、これがまた不思議な点です。
しかし、おかしくて苦しいのに止められないのは正当な理由があるのです。
強迫行為や強迫観念を行わない方が100倍苦しいのです。
そして、強迫行為を行えば少しの間ですが、即座に楽になるものですから行ってしまうのです。
我慢することで生じる「もっと苦痛なこと」が生じないように、苦痛な強迫を行うのです。
動物は、行っている最中か、し終わって1分以内に「いいこと」が起こると、その行動をもっとするようになるという大原則から逃れることができません。
即ち、もっと苦痛なことが起こらないという中期的「いいこと」が生じ、そのうえ強迫を行うと即座に一瞬は楽になるという即時的「いいこと」が起こるので、強迫は強固に維持されるのです。
このパターンを打ち破るのは、治療においても非常に難しいことです。
お薬が著効する例は1割に満たないと思います。
有効とされる暴露反応妨害法が実行できる患者さんは殆どいません。
さてさて、魔法のように短期間で効果が得られる治療法はないものでしょうか…
メタ認識療法の専門家が日本でも現れてくれば、魔法が起こるかもしれません。
不安障害には本で読んだ方法を施行するだけでも効果が認められるのですが、強迫性障害にはそうはいかないようです。
小生も本でしか見たことがない治療法ですが、不安障害には確かに効果があるので、期待しつつ専門家の登場を待つことにしましょう。