クリニックで困ること…
クリニックで困ること…
開業して15年になりますが、クリニックで一番困ることは、
症状の激しい患者さんを、普通に対応できないことでしょうか。
もちろん、最近では暴れているような急性期の興奮状態にある患者さんが受診することは数年に1回くらいしかありません。
しかし、
通院しておられる患者さんが急変して受診されたとき、
全くと言っていいほど私のクリニックでは対応ができないというのが現状です。
お薬も調整するのですが、直ぐに効果は期待できないため、
もう入院先を探してお願いするしか方法がありません。
そこでまた困るのが、入院先探しに難渋することです。
病院勤務も20年以上あるので、病院側の事情もよく理解できますから、
あまりに無理なお願いはできません。
重症の患者さんが多く入院していてスタッフの対応が限界に達しているときは、ベッドが空いていても入院を断られることが多々あります。
病院勤務時代は、私もそういう対応をしてきました。
しかし、開業して入院をお願いする側に立つと、緊急で入院をお願いしたい場合が結構あるものです。
そこで受け入れてくれる病院探しをするのですが、大抵は1件目で入院先を確保することができません。
3件4件とお電話してやっと入院受け入れ先が見つかることが多いのです。
病診連携(病院と診療所の連携)という言葉がありますが、これがシステムとして存在はしておらず、個人的な繋がりで成り立っているのが現状です。
個人的なつながりとして一番有効なものは、以前そこに勤務していたという事実でしょうか。
二番目が、お願いする病院の院長など有力者と個人的に懇意な関係にあることでしょう。
ところが、これらの2つの繋がりも、時間経過とともに関係が希薄になってくると効力が薄れてしまうのです。
特に、病院のスタッフ(医師だけでなく事務の方や看護師さんなども含めて)が入れ替わっていくに従い、
以前勤務していたという神通力(正確には信頼関係やこちらに対する安心感)が失われていくのです。
ここで救いとなるのが、これらの個人的関係によらず、
その病院として急患は空床がある限りは受け入れるという病院としての方向性を明確に有している病院群です。
これらの病院は、個人的面識がなくても、
正確な病状や状況をお伝えすれば、
ほとんど何時でも入院を受け入れてくれるのです。
病院指導者の強い社会貢献への信念がうかがえると同時に、
病院の毅然とした方針を了とする勤務医の先生方の、
医師として社会的責任を全うしようという構えに尊敬の念を禁じ得ません。
このような病院が、さらに増えていくことを切に願っています。
社会システムとしての真の病診連携が確立されるといいのですが…