医師の説明責任と自動車運転
医師の説明責任と自動車運転
ある患者さんが自損事故を起こしたことで、少し前に、警察から事情聴取の要請があり協力しました。
事情聴取の目的は分からないものの、警察への協力は国民の義務であるため要請に応じた次第です。
そこで聴かれたことの要点は、
⑴病名は何か?
⑵投薬した薬剤で眠気が出るということを説明したか?
⑶運転を禁止するよう指示したか?
の3点であったように思われます。
道路交通法の改正により、精神障害を有するもの(主に統合失調症とうつ病を含む躁うつ病)に対する自動車運転の要件が厳しくなっています。
これに関連した事情聴取であったのかもしれません。
⑴に関しては、もし患者さんが自分の病名を知っていて、かつ免許取得の際に申告していないのなら、処罰の対象となるらしいのです。
⑵⑶は、医師の告知義務に関連するかもしれません。
⑵については、処方のときの一般的副作用説明で、眠気などについてお伝えするので問題はないと思いますが、
⑶については微妙な問題が生じてきます。
営業で車を運転されている方に対して、
服薬しているので車の運転を禁止します!
と言えばどうなるでしょうか?
最悪の場合、服薬をしないか通院をやめてしまって病状が悪化し、
病気による注意力の障害(服薬によるものより程度が重いことも)により、もっと危険な状態になるかもしれません。
仕事で車に乗ってはいけません!
通勤に車を使ってはいけません!
バイクは?
自転車は?
バイクや自転車はもっと危険かもしれません…
精神科の治療薬のほとんど全てに、運転や危険な作業に従事させないように!との注釈が添付文書に記されています。
メンタル面の病気で服薬している方々は、車両の操作を行わないことがいいのは確かでしょう。
では、どのように治療を進めればいいのでしょうか?
まず考えられるのは、添付文書に上記のような記載がなく、注意力に障害が発生しない漢方薬で治療をはじめ、
この治療開始のときに、
あらかじめ、
漢方で効果が得られず、眠気のでるような薬剤の投薬が必要になった場合は、運転をしないようにしてください!
というような説明を事前に行って治療を開始することが1つの方法かもしれません。
不幸にも(?)服薬をしている間は、絶対に運転してはいけません!と指導している医師を見たことがないのですが、他のクリニックではどのような助言を行っているのか知りたいところです…