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「効く」の3態

「効く」の3態

薬薬屋さんがよく言ってくるのですが、

このお薬Aは、○○病に効果があります!

しかし、この効果があるという意味合いは、多くの場合、

臨床治験で、○○病にAを投与したものと偽薬を投与したものを比べると、

症状の評価尺度の点数で、統計学的に有意な得点上の改善が認められた、

ということを指しています。

ところが、いくら評価尺度で改善が得られても、

その改善が「実用上の改善」である保証はありません。

さらに、たとえ実用上の改善が得られたとしても、

患者さんが自覚的に「満足できる改善」が得られたということではないという、

改善の3重構造を意識しておく必要があります。

つまり、

改善人は3つのレベルがある。

すなわち、

①学術上の評価尺度レベルでの改善(いわゆる改善レベル)

②臨床上の実用レベルでの改善(有効というレベル)

③生活の質からの満足レベルでの改善(満足というレベル)

の3つです。

これは、

「治る」「効く」

という無意識の定義に大いに関連してきます。

「治る」という意味を、患者さんと治療者で異なる定義で解釈しているということと、

「効く」という意味を、薬屋さんと治療者で異なる定義で解釈しているということの、

2つのケースで問題が生じる可能性が出てくるのです。

「治る」ということを、

患者さんは「完全に元の何の問題もない状態に戻る」という意味で捉えています。

一方で、

治療者は「概ね社会生活で支障がない程度にはなります」という意味で治るという言葉を使っていますが、

互いに同じ会話の中で、その定義を直接的に言葉で表現することがないため、

トラブルの要因になる可能性が生じてしまうのです。

また、

薬屋さん(MRさんというのですが)は、

自社製品を宣伝するのがお仕事ですから、

自社製品の有効性を、

何たらスタディでは(統計的に有意に)効果が証明されています!

というように自信を持って推奨してきます。

ところが、

効果がある≒治る

というように無意識に期待している患者さんからの満足度は、

意外とそのお薬の評価が低かったりします。

また、治療者側も、

効果がある≒患者さんが満足できる、

というよう前提で効果があるという言葉を捉えていることが多いでしょう。

ですから、

宣伝される程には効かないなぁとか思ってしまうのです。

この差異がどこから生じるかと考えてみますと、

「改善=有効=治る」

ではなく、

「改善≒有効≒治る」

正確には、

「改善<有効<治る」

という効果における3重構造に起因していると思うのです。

症状を数値化して測定するための評価尺度を使用して症状を計測し、

多少、得点が統計学的に有意に改善したといっても、

調査対象を増やせば増やすほど、

統計学的な差異の検出力が上がります。

つまり、

比較する症例数を増やせば増やすほど、

小さな差でも統計学的に有意に改善が得られた!

という結論になるのです。

この小さな改善は、

あまりに小さなものであれば、

臨床的に有効であると言えるものとはならない可能性があります。

さらに、臨床的に有効とされるレベルの改善であっても、

その有効性の差が小さなものであれば、

患者さんは、その有効性を実感できないかもしれません。

いうなれば、

統計学的に有意に改善が認められ、

臨床的にも有効(治療者から見て効果があった)であるけれど、

実用上、患者さんは満足していない治療手段である!

ということが生じうるのです。

私たち医療関係者は、

直接的関係者であるとか間接的関係者であるとかいうことに関わらず、

治るであるとか効果があるとかいった言い回しをするときには、

特に患者さんに対しては、

細心の配慮を行っていくことが求められるのではないでしょうか?

私も自戒していこうと思いますm(_ _)m

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