教育による発見?
教育による発見?
認知行動療法の基礎的構えは、協働的構えによる誘導による発見であるとされています。
しかし、
通常の保険診療の範囲で、
治療者と患者さんが、
協働していくことには問題はないものの、
「ソクラテスの質問」という技法などを用いて、
患者さんが自ら発見したと自覚できるように協働的構えでの誘導による発見に至らしめることは、
診察時間という点から、
困難であると思われます。
そこで、
保険診療で行える方法として可能性があるやり方は、
教育による発見!
と呼ぶべき方法でしょうか。
一般的な診察において、
最も重要と思えることは、
正確な医療情報を患者さんに伝えるということではないでしょうか?
患者さんの病状を正確に把握し、
適切に検査して、
正確な診断と、
正確な治療手段のオプションと、
正確なこれからの見通しを伝え、
事実に基づく実績を知ることによって、
患者さんが治療法の選択を自ら客観的に行えるようにすることが、
患者さんの不安を軽減し、
互いの信頼関係を強めるポイントとなるものであると考えています。
これを、心理教育と言います。
認知行動療法における協働的構えによる誘導による発見という文脈においては、
教育すなわち専門家である治療者が、
教え導く、
という治療構造を取ることは、
よくないことであるとされています。
しかし、
保険診療内で治療するときには、
治療時間として利用できるのは、せいぜい10-15分ということが多いでしょう。
1日に40人も50人も、ときには80人100人も受診される人気のスーパー精神科では、
お一人5分も時間をお取りできないかもしれません。
こういった短時間の保険診療では、
1回50分程度で施行される、通常の認知行動療法面接の面接法を行うことは、
ほとんど不可能でしょう。
そこで、
専門家の知識の提供による正確な情報をお伝えして、
客観的な治療選択を患者さんが自ら決断できることにより重点をおいた、
説明による発見、
という治療における構えが実用的となると考えています。
例えば、
うつ病では、
物事の受け止め方(=認知)が、
悪い方に悪い方に行ってしまい、
それによって、うつが酷くなるとか治らないとかの状態となってしまいます。
そこで、
悪い方にばかり解釈が片寄っていないかを、
客観的に検証して気分を改善することが、
薬物療法と同等の効果を発揮し、
再発予防にも有用であることが実証されていて、
その方法の中に、認知再構成法というものがあり、
それは、これこれこういう方法で、実際にはこう行うのです。
などといったように、
実証された事実の情報を提供し、
実際にそのような方法を実行するよう勧めてみるというものです。
そしてそれを実行してみると、
実際に気分が改善することを実感してもらうのです。
不安障害であれば、
メタ心配について解説して心理教育を行って、
実際に、
自分の認知内容や認知形式を検証してもらうというような方法で認知を再構成していく。
というのが教育による発見の手法でしょうか。
答えを導くように誘導するのではなく、
答えを提示しておいて、
その答えを自分自身の体験で確認してもらうというやり方です。
誘導による発見ほどの効果は得られないかもしれませんが、
保険診療で誘導による発見という手法を行うのは時間的に困難であり、
出来ないことを行なおうとして何も得られないよりも、
薬物療法との併用で、教育による発見の手法で実際の効果を得る方が、
遥かに患者さんの利益に資することになると信じています。
実際、不安障害の治療では、
教育による発見の手法は、
相当、早期の改善に役立っているという実感があります。
更に効果を確実なものにしていけるよう、日々、研鑽して行きたいと思っております。