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つぶやき一行/2020-09-06

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説明

田宮二郎の自殺は防げたか?家族からの支えてもらい方について!

人気を博しているテレビドラマがクライマックスを迎えようとているタイミングで主演俳優が自殺するなら、それは大きな衝撃となります。

まさにそれが田宮二郎の自殺です。田宮は躁うつ病と診断されていますが、躁うつ病の自殺はうつ期に生じることが多く、田宮の自殺の教訓はうつ状態の人にも役に立つものです。

ここでは、後に家族が語った内容をもとに、自殺を防止するために必要な家族への援助の求め方について書いています。

映画界追放!田宮二郎が自殺に至る背景

田宮二郎は、ミスターニッポンコンテストで優勝したのを切っ掛けに映画会社大映(倒産)に俳優候補として入社、昭和36年の映画『悪名』で勝新太郎との共演から人気俳優への道を歩みはじめています。その後、大映を支える看板俳優となって、昭和41年の映画『白い巨塔』で名声を確立しています。

しかし、映画のポスターの名前の序列が一番手扱いでないことに抗議したことが社長の逆鱗に触れ、大映を退社することになります。当時のしきたりで他社の映画やテレビにも出演することができなくなって、いわゆる干された状態となり、この頃からうつを患いはじめます。のちに躁うつ病と診断されており、名前の序列を抗議したときには、軽い躁状態にあった可能性があります。軽い躁状態から「俺が俺が」という状態になって激しい抗議となり、その態度が社長を怒りを買うことになったのでしょう。

今もそうですが、俳優やタレントにとって干されるという状態は耐えられないことです。田宮の場合もうつに至る大きな要因なったのが干されることへの恐怖であったと思われます。その後、この田宮を自殺へと導いたのがうつ状態です。

うつになる理由?華やかさと空しさの狭間

映画界からの追放は田宮にとって大きなストレスとなっていきます。田宮は家族を養うためドサ回りとも言われるキャバレーなどでの地方巡業まですることとなります。やがてテレビ界に活路を見出しクイズタイムショックの司会者の役を得ることで、テレビでの成功を得ることになります。

しかし、当時、映画俳優が映画での仕事がないためにテレビで仕事をすることは、大いにプライドを傷つけることであったのです。テレビは芸術性より視聴率優先、これが映画と決定的に違う点なのでした。視聴率第一主義のテレビの仕事をすることは田宮にとっては金のために魂を売るという行為に思えてしまいます。

注目され持てはやされるという華やかさと、映画俳優としてこれでいいのかという空しさに悩むことになるのです。しかし、芸能人には、仕事を選べば干されてしまうという本能的な恐怖感が刻み込まれています。干されないために申し出られた仕事は全て受けるてしまうのです。

売れれば売れるほど過労状態となり、身も心ともに疲れ切り追い詰められてうつになってしまいます。田宮の妻がのちに語ったところによれば、過密スケジュールによる過労と底の浅いテレビドラマへの出演は、田宮の心を壊して行くことになったのです。映画界で再び脚光を浴びることは田宮の切実な願望となっていきます。自ら映画の製作に手を染め、その不成功により大きな借金を抱えることとなるのでした。

そういった中で田宮のうつは更に根深いものとなっていきます。うつ状態の中で判断力も弱められ、M資金であるなどの詐欺話に乗せられるようになり、さらに借金を重ねることになるのです。これがうつをさらに悪化させることとなります。

すれ違う家族の思いと田宮二郎の思い

田宮がM資金など普通の状態であれば手を出さないような詐欺話にはうつだけではなく、後に躁うつ病と診断されたように、躁状態から気もちが大きくなってM資金等というファンタジーを信じてしまった可能性があります。

また、躁うつ病にはうつと躁が混じった躁うつ混合状態というものがあり、単純な躁状態と違って家族からも躁状態であると分かりにくいこともあるのです。完全にはうつでも躁でもない田宮を、家族は病気とは認識できなかった可能性があったのでしょう。詐欺話に乗って資金集めに奔走する田宮に家族もテレビの仕事を沢山貰ってくるという協力をしたようです。

しかし、田宮はテレビドラマの仕事に空しさを感じ、入魂の演技で史上最高の財前五郎(主人公)と後に称されることになる田宮ですが、過密スケジュールに圧殺されて心身を蝕まれてて行くことになります。家族が田宮の状態が病的であると気づいていたものの、躁うつ病にありがちな疾病否認という自分の病気を認識できない状態となっていた田宮は、旧知の精神科医、斎藤茂太の治療も拒否してたのでした。本人が病気の自覚がなく治療を拒否するとき、治療できるかどうかの決め手となるのが家族といえでしょう。

うつの人を支える家族へ伝えておくべきこと?

躁状態のない単純なうつの方が上記の疾病否認をすることは殆どありませんが、全くないわけではありません。田宮は躁うつ病でしたが、家族は病気で判断力がなくなっている田宮のしようとしていることに、結果的に従うことしかできなかったのでしょう。

やがて常軌を逸した田宮の行動に危機感は感じるようになっていきます。しかし、当時、まだ精神の病というものは奇異な偏見を持って見られる時代です。強制的に精神科病院に受診させることを決意するのは容易にはできないことは理解できます。

現在であれば心の病への偏見もかなり少なくなっており、また、うつは自殺など命にかかわる可能性のある病気であることも広く知られています。田宮は躁状態もあったことから家族との関係がギクシャクしたものとなっており、それが結果的に家族が田宮を支えきることができず自殺を防げなかった原因だったのでしょう。

そこで、自分の病状の軽い間に、自分が正常な判断をできなくなる可能性もあることを家族に告げておき、家族が心配になったときには声かけしてもらったり、場合によっては強制的にでも病院に受診することを助けるよう伝えておくようにししておくことが望まれます。大げさと思われるかもしれませんが、命を守るためには最悪の事態を想定しておくことも必要です。うつを患っている人は配慮してみる価値があるのではないでしょうか。

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