衝動の脳科学
衝動の脳科学
Tag: 脳科学 衝動性
衝動性の亢進にも体質的なものが関係している?
衝動をコントロールできずに情緒的混乱をきたしやすい病態に境界性パーソナリティ障害があります。
いいときはいいのですが、一寸した言葉や態度、状況に影響を受けて、情緒的混乱状態となり、周囲を自殺の素振りや情緒的混乱を無意識的「手段」として用いて、周囲を振り回すという、対人関係や社会家族状況からの刺激に絶望感と見捨てられる不安を持ちやすい病態を示します。
衝動がコントロールできないということも特徴の1つです。
生物学的な要因として、一昔はセロトニン系(5-HT)機能の低下がまず注目され、その後、ドーパミン系(HVA)機能の亢進が攻撃性と関与しているとの見解が、さらに、GABAやドーパミン、ノルエピネフリンなどの複数の神経系が関与すると考えられるようになっています。
直接関係があるのかは定かではありませんが、自殺目的ではない自傷行為(NSSI)にはセロトニン系やドーパミン系の関与はなく、脳脊髄液中のbeta-endorphin aやmet-enkephalinの低下が見られるとの報告があり、今後、臨床における薬物療法の工夫において新しい観点が必要のとの意見もでているようです。
私たちの日常臨床で、これらの知見が反映されてくるのは、まだまだ何年も先のことになりますが、現在よりもはるかに効力の確実なお薬が、カウンセリングに代わって中心的治療になるのかもしれません。
それはそれで、よいことなのでしょうが、人のこころはそう簡単に科学で割り切れる問題ではないような気もします。
何十年後には、この答えが出るでしょう。