抗うつ薬は効果がない?
抗うつ薬は効果がない?
うつの診療をしている私たちにはショッキングな報告ですが…。
非常に重度のうつ病以外では、抗うつ剤は効果がないという研究結果が、アメリカとイギリスの大学から報告されました。
抗うつ薬は、軽度~中等度のうつ症状にはほとんど効果みられないというのです。
1つは、米国医師会雑誌(Journal of the American Medical Association、JAMA)というかなり信頼性のある雑誌に発表されたのが、米ペンシルベニア大学の研究チームの報告です。
抗うつ薬と偽薬の治療効果を比し、ハミルトンうつ病評価尺度で重度から軽度のうつ病と評価された成人718人を対象に調査した結果、抗うつ薬は、非常に重度の症状を伴った患者には大きな効果があったが、軽度・中程度・重度のうつ病には効果はまったくもしくはほとんどないという結果だったというのです。
もう1つは、イギリスのハル大学の研究者が、米医学誌「PLoS Medicine」に発表したものです。
米国の情報公開法により公開された47の治験結果を分析し、軽度から中度のうつ症状を呈する患者について、偽薬を投与された患者と抗うつ剤を投与された患者で、症状の改善に大きな違いはみられなかったという報告です。
抗うつ薬の製造を行っている製薬会社はこの報告に、抗うつ薬の重要な効果を無視していると反論しています。
わたしの経験からすると、十分な休養がとれる状況をつくって療養に専念していただければ、本格的な抗うつ薬を使用しなくてもうつ病は治っていくのは確かなことではあると思われます。
しかし、症状から生じる不安や焦燥感、休んだことで会社の仲間に迷惑がかかるとの罪悪感は休業しただけではすぐには治まりません。
やはり、安定剤や、なおりが悪いときには抗うつ薬は必要な場合が多いように感じます。
わたしの考えは、1に休養・2に環境調整(安心の見通しがもてるような調整)・3,4がなくて5に薬です。
うつで抗うつ薬を使わない医師は、日本にどれくらいいるのでしょうか…。