高齢者のうつ病に抗うつ薬は危険?
高齢者のうつ病に抗うつ薬は危険?
Tag: 抗うつ薬 高齢者 リスク
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高齢のうつ病患者が抗うつ薬を使用すると、三環系抗うつ薬以外の薬剤は、自殺企図/自傷行為、てんかん/痙攣、死亡、転倒、骨折などを増やす可能性があることが分かったというのです。
英Nottingham大学のCarol Coupland氏らが、BMJ誌2011年8月13日号に報告しました。
65歳以上のうつ病患者6万746人について5年の追跡を行ったとのことです。
対象薬剤は、SSRIのシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン(商品名パキシル)、セルトラリン(商品名ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(商品名レクサプロ)、三環系抗うつ薬のアミトリプチリン(商品名トリプタノール)、ドスレピン、ロフェプラミン、トラゾドン(商品名レスリン)、「その他の抗うつ薬」であるベンラファキシン、ミルタザピン(商品名リフレックス)の11剤(処方回数全体の96.0%)です。
どの種類の抗うつ薬も、抗うつ薬使用なしの場合と比較すると、全死因死亡、自殺企図/自傷行為、転倒、骨折、上部消化管出血のリスクが高くなった。
特に、三環系薬剤のトラゾドン(商品名レスリン)は、全死因死亡と自殺企図/自傷行為のリスクが高かく、「その他の抗うつ薬」のミルタザピン(商品名リフレックス)で、全死因死亡、自殺企図/自傷行為、脳卒中/一過性脳虚血発作のリスクが、ベンラファキシンで、脳卒中/一過性脳虚血発作、骨折、てんかん/痙攣のリスクが高かったという結果が得られました。
反対にどの有害な転帰についてもリスクが低かったのは、アミトリプチリン(商品名トリプタノール)とドスレピンでした。
投与量が多くなるほどリスクが増えたのは、三環系薬剤およびSSRIにおける全死因死亡、転倒、てんかん/痙攣でした。
三環系薬剤は投与量が多いほど骨折のリスクが高まりました。
報告者は、高齢のうつ病患者に抗うつ薬を処方する場合、三環系薬剤に比べ、SSRIとその他の抗うつ薬の有害リスクが高く、トラゾドン(商品名レスリン)、ミルタザピン(商品名リフレックス)、ベンラファキシンのリスク上昇が顕著であることを考慮して、投与によるリスクと利益を慎重に勘案すべきだと述べているとのことでした。
若年者でも、自殺に関連するリスクが抗うつ薬で高まるといわれています。
抗うつ薬は、若年者でも高齢者でも、その投与について特別の配慮が必要なようです。