光トポグラフィーの疑問
光トポグラフィーの疑問
光トポグラフィーはどこまで信頼できるのでしょうか?
その意義とは?
話題のNature誌に日本の光トポグラフィー偏重を批判する記事が載りました。
光トポグラフィーとは本当に診断効力があるのでしょうか?
うつ病、躁うつ病、統合失調症で、多少の差はあるが70-90%前後の診断確率があるというのですが…
検証の過程をシュミレートしてみましょう。
まず、DSMや研究用ICDなどで「診断をくだされた」うつ病、躁うつ病、統合失調症患者を抽出する。
これらの各疾患ごとに、患者の光トポグラフィー所見と正常人の光トポグラフィー所見を比較して、疾患別にその特徴を比較する。
各疾患ごとに、その所見の差を統計学的に比較して、その差が統計学的に有意であれば、光トポグラフィーは鑑別の手段の候補となるでしょう。
更に、病気であるが正常と判断される率(偽陰性)と正常だが病気であると判断される率(偽陽性)を調べ、それぞれの割合が小さいこと。
これらの全てが満たされると鑑別のための検査として可能性を持つようになると考えられます。
更に、検査を比較した患者と正常者の数が数千人を上回って初めて信憑性を持つようになるのではないかと思われます。
ところで、全く病気か病気でないか分からない人を連れてきて、
光トポグラフィーをっとた場合、
その人が例えば躁うつ病である場合、そうであると診断できる確率が70%であるなら、
正しく診断できるのは、大まかに10人に7人ということになります。
10人中3人は誤診する!のです。
問診だけでも10人中少なくとも9人は正しく診断できるはず。
これではする意味ないのでは?
では、光トポグラフィーの意義とはどのようなものでしょうか?
例えば、
診断基準で「うつ病」と診断されているけれど、うつ病の治療をしても治らない患者さんに光トポグラフィーを行って、
①「この人はうつ病である」との所見が出ても何もメリットがありません。
②「この人は躁うつ病あるいは統合失調症である」との所見が出れば、躁うつ病あるいは統合失調症の治療をすると治る可能性が出てくるのでメリットが生じることになります。
③ただし「診断基準でうつ病と診断されていた患者さん」が、光トポグラフィーで「躁うつ病あるいは統合失調症」の光トポグラフィー的特徴があるという所見が出ても、診断は診断基準によってなされるのが現在の医学ですので、この患者さんは「うつ病である」ということが科学的真実(現在のところでという注釈付きですが…)であり、光トポグラフィーで診断が変わるわけではないのです!
結論は、
①光トポグラフィーは診断には殆ど役に立たない。
丹念に病歴と症候を問診(家族を含む)する方が光トポグラフィーを取るより100倍早いし正確でさえある!
②治療抵抗性のうつ病に施行して、躁うつ病か統合失調症の所見が出れば治療を変える根拠となる。
軽躁状態を見落としている躁うつ病や、うつ病擬きの統合失調症にはする価値があるでしょう。
うつ病を、躁うつ病や統合失調症と誤診することはまずないでしょうから、躁うつ病や統合失調症と診断されている患者に光トポグラフィーを施行するのは医療費と労力の無駄遣いになるのでは?
結論の結論は、光トポグラフィーが、「治りにくい、もしくは診断がつけがたいうつ状態」の患者にのみ施行する価値がある、ということになるでしょうか?
さて、みなさまは如何お考えになるのでしょう…