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ビジネス書は侮れない!

ビジネス書は侮れない!

ビジネス書を読んでいると、意外な発見や精神医学とくに認知心理学や認知行動療法と共通する観点からの主張があることに驚くことがある。

専門書、特に精神分析関係の書物から実臨床に直接役立つ知識を得ることが稀であることと強烈な対比をなすといつも感じてしまう。

今回、『営業目標を絶対達成する横山信弘の「超・行動」ガイド』を読んで「ほーっ」と思ったことがいくつかあった。

まず1つは、「ネガティブなフレーズをリフレインしていると、思考ノイズが身勝手な物語を作りはじめて妄想に発展することがある。」という一文。

これは当に関係フレーム理論そのものではないか!

また、逆アファメーションとも言えるが、アファメーション自体が関係フレーム理論と似たようなものであるから当然といえるが…

上記の記載を精神医学的に言い換えるなら、

「ネガティブな自己イメージを言語的に心の中で繰り返し考えていると、あたかものそのネガティブな自己イメージが現実であるかのように感じられて、そのネガティブな自己イメージに合うような自己が形成される。」

ということになるかな。

さらに、次の文章。

「良い提案をしなければと悩み、時間と労力のみ浪費して、挙句、良い提案が思いつかず、益々、顧客のところに行くことができない。そうすると益々、顧客のことが理解できなくなって、益々、良い提案が浮かばない。という悪循環になる。まずは顧客に顔を見せに行って信頼関係を築くこと!」

これは、どう読み解くか?

即ち、

「最悪のことを回避しようと、悩むことに悩み、時間と労力ばかり浪費して、その挙句、具体的な解決策を思いつかず、結局なにもしない。悩むことに悩むだけで何もしないから益々悩んで何もしないという悪循環に、患者は陥っていく。」

ということか?

また1つ。

「いいネタを探し、トークを磨いて臨めば結果は手に入ると思っている。しかし、客はあなたの話など聞いていない。信頼関係を築くのがまず第一。信頼関係を築くには足を運ぶしかない!」

は如何に読み解くか?

「悩めば何とかなると思っている、いや無意識に信じている。悩んでも行動しなければ何も変わらない。動くしかないのだ!」

であろうか。

さらに、こうある。

「営業(職者)の行き過ぎた自由を奪え!」は「患者の行き過ぎた悩む自由を奪え!」でしょう。

そして、「場当たり的なメールチェックの禁止」は「患者の場当たり的な悩むことの禁止」である。

この2つは、不安や心配事、過去を悔やむ時間を心配時間まで先延ばしするという新世代の認知行動療法に通じるものである。

現代の認知科学では、まだ生じてもいないことを繰り返し持続的に心配することや、過ぎ去った過去の出来事を今当に起こっているかのごとく反芻するという反復思考が、症状の持続に影響することが分かっている。

また、先に述べた「悩めば何とかなる」という信念は、悩むことは役に立つというポジティブな信念であり、ポジティブであるからこそ捨てられない信念であり、悩むだけで何もしないという回避行動を継続させることになるのだ。

この回避行動も症状を維持する要因となることが分かっている。

恐れていることを回避すればもっと怖くなる。

嫌なことを回避しているともっと嫌になる。

そして回避することで即時的には嫌なこと怖いことを体験せずに済むという「いい短期的結果」が生じるので、回避という行動は更に強化されるのである。

先に述べたように、回避すればするほど回避した対象は脅威の度合いを増していくという「よくない長期的結果」が生じてくる。

回避している限りは症状はよくならない。

ともあれ、なんとビジネスの達人は認知科学のよき観察者であることか!

それ故か、ビジネス書は時に医学の専門書以上に役に立つことがあるのだろう。

さてさて、次はどんなビジネス書を読んでみようか。

どんなことを発見すか…楽しみである。

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