電話再診の功罪
電話再診の功罪
電話での相談(電話再診)については様々な意見があります。
危機介入に有効であるとするものから、悪影響を与えるというものまで、その評価は分かれるというのが現状でしょうか。
しかし、これらの見解は、どんな病状の方にも一律に適用できるものではなく、相談される方々の心理性格特性に応じて評価されるべきものだと思います。
自殺を決意したとき、ふと、主治医に電話してみようと思いつき、その電話で自殺を思いとどまった方は沢山いらっしゃいます。
しかし、ある種の患者さんにとっては、病状を維持させたり悪化させる要因となるようです。
私が精神医学研修を受けた医局では、患者さんに休日はない!との信念のもと、深夜でも電話で深刻な精神心理相談を受けていました。
その多くが、良くなるどころか電話相談を乱用し、延々と主治医との面接で相談すべき過去の未解決の葛藤などを話しはじめてしまうのでした。
一度受けてしまうと、ほぼ毎日、午前2-3時に電話が掛かって来るようになりました。
こうしているうちに、心理的些細な問題まで手軽に夜間ベッドの中から相談してくることが当たり前のようになって、受診して主治医に相談して自分で解決するチカラを養うことができなくなってしまいます。
深夜に少しでも心を乱したとき、コンビニエントにベッドの中から電話相談するようになって、
ちょっとした心配事も自分で解決しない依存体質が固着されてしまう悪性の退行状態(子供返り)となって、病気が治らなくどころか悪化さえしてしまいます。
一度、悪性の退行状態に陥ってしまう、本当にもう回復は見込めなくなります。
そんな悲惨な方々を何人も見てきた私は、
心を鬼にして、こうお応えすることにしています。
すなわち、「お電話では、複雑な内容のご相談はお受けしないようにしているのです。後日、受診された際に、お話ししましょう。宜しいですか?」と。
半ば強引にお願いして電話を終えるようにしています。
冷たい医者だと思われたとしても、治らなくなってしまうことが分かっている状況に移行させないことの方が大切であると、私は信じています。
この信念は、これからも変わることはないと思います。
ご理解頂ければ幸いです。