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投薬のジレンマ

投薬のジレンマ

どんな人でも、お薬は飲みたくないのが人情でしょう。

しかし、苦痛があって治りたいという思いがあるから、飲みたくないお薬もあえて服薬する選択をするのも人間心理(思考=ルール支配行動)です。

治療の世界的スタンダードを説明して、いくつかの治療オプションを提示する(インフォームドコンセント)と、大多数の方々はスタンダードの治療(服薬を含む治療セット)を選択されます。

特に、重度のうつ病にしても躁うつ病にしても、薬物療法は重要な治療手段となります。

とりわけ躁うつ病に関しては、薬物療法なしに治療は考えられないと言っていいでしょう。

治療効果の得られる10分の1前後の服薬量では、治療効果も再発予防に資する効果も殆どないと思われます。

「寛解期」といって、症状が全く消失している時期になって、それも何年も寛解を維持されている場合には、「もうお薬を飲まなくていいのじゃないか?」と考えるのは極普通のことです。

しかし、1年も経過しないうちに再発を繰り返している場合や、十分な寛解を示していない方々は、まずは標準的薬物療法(その他の心理療法などを含めた治療セットも行うことは言うまでもありません)施行して寛解状態に導くことが最優先となります。

ところが、「お薬をこれ以上のむのは…」と標準的薬物療法の施行を固辞される方々がおられます。

病状が長期に安定しない方に多くみられるように思いますが、十分な治療をしないから安定しないのか、十分な治療をしても安定しない方(難治例)なのかは、外部からは測定のしようがないので、判別がつかないのが現状です。

医療者側としては、十分な治療をすれば寛解に至る方であると断定できれば標準的治療を施行するよう強く説得するのですが、安定しない方々の3分の2以上は上記の難治例に相当するため、強くは説得できないというジレンマがあります。

より良好な改善を目指して可能性を探るスタンダードの薬物療法を受けるか否かは患者さんの自己決定権であるため、選択しないと自己決定されたときには、サポートしながら経過をみるしかなくなってしまいます。

上手な説得と説明のスキルを学び磨き上げることが課題となりますが、標準的服薬を固辞する方には、「服薬は敗北であるという信念」「薬に依存して薬から離れなくなってしまう恐怖」「周囲が悪いのにナゼ私が服薬しなければならないのかとういう腹立ち」などの心理が裏に隠されていて、なおかつ「こだわりの強い思考特性」を持っていることが多いようにも感じます。

このような方々には通常の支持的面接では動機づけが困難であり、動機づけ面接技法やACTなどの習得が治療者側に求められるかもしれません。

いずれも一般的に接することのできる技法ではないため、分かっているのに学べないという別のジレンマも生じてきます。

標準的服薬を固辞する方への治療は本当に難しいものだと改めて痛感していますが、治療者として何とか研鑽するすべを模索いたします。

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