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病気であることと病気に対する態度

病気であることと病気に対する態度

私のモットーは、

楽しくなければ、生きていけない。

苦しくなければ、生きる価値がない。

挑まなければ、生きる資格がない。

というものです。

楽しくなければ生きていくのが苦しくなります。

でも、思うようにならないことが生じるから、人生は意味あるものなのかも知れません。

全てのことが思うようになるなら、人は傲慢になってしまうかも知れませんし、

欲望には限りがありませんから、同じ状況に飽き飽きして退屈という苦悩に襲われることになります。

思うようにならないことがあるからこそ、それに挑戦して、

自分で切り開き、コントロールしているという感覚を得ることで、充足感や究極的には自己実現、そして自己超越へと至る可能性が出てくるのではないでしょうか。

しかし、

切り開くといっても、達成を目指すことのみが目的となるなら、苦悩から逃れることはできなくなります。

初期仏教の流れの中で、次のように言う人がおられました。

私たちは、

何も握りしめていないし、

誰とも争ってはいない。

そして、

どこにも向かっていない。

のだと。

努力してもどうにもならないことは多々あるものです。

生まれながらの障害や、人生途中で障害に至ることもあります。

呼吸が麻痺して数年で死に至る病気、ALSなどになってしまうこともあるでしょう。

これらの困難は、通常に使われる意味では克服することは不可能です。

「私たちは、何も握りしめていないし、誰とも争ってはいない。そして、どこにも向かっていない。」というあり方からすると、

上記の困難も、意味あるものとすることができるかも知れません。

例えばALS。

やがて、歩くこともできず、書くことも話すことも、最終的には自分で呼吸することもできなくなってしまいます。

例えば閉じ込め症候群。

Locked-in syndrome(以下LIS)と言いますが、これは脳障害により、目を動かす以外に意思を伝える手段が全て無くなってしまう疾患です。

ALSもLISも、ともに通常の思考や意識は保たれています。

ガンなどの痛みとともに、これ以上の苦難困難は無いのではないかと思われる状態です。

精神疾患もこのような苦難の1つであると考えていいかも知れません。

これらの苦難に遭遇したとき、

運命を恨み、人生を儚んで絶望に満ち満ちた心情になることは普通のことでしょう。

しかし、ALSやLISになってしまった方々の著作を読んみると、

確かに絶望や悲嘆はあるものの、それが解消しているという意味ではなく、

それらの苦悩は苦悩としてそのままに残されているのだけれど、

それらの苦悩を解消するのではない、それらを超越した心的領域に到達しているようなのです。

苦難すなわち障害を受容し、
…健康であることを"握りしめない"

そうなった運命に抗わず、
…不幸と戦わず、そうでない人達を妬まず、何とも"争っていない"

今のそのままをよしとする。
…ありのままを受け入れて、そのままにしておくこと、即ち"どこにも向かっていない"

治ろうとも逃れようとも解決しようとも、そのようにすることから超越する。

そこに苦悩から解放されるという概念では語れない境地が立ち現れる、

生きる意味の創生がはじまるのかも知れません。

うつ病や他の心の病で絶望しておられる方にとって、このような心の構えを推奨するのは酷なことであることは重々承知しているつもりです。

しかし、

病気であることは誰にも自分で決められることではありません。

でも、

病気であることに対して、どのような態度をとるかは、病気であっても自分で決められることです。

頑張らないけど諦めない。

頑張れないけど、諦めず、

あるがままの今の自分の状態で、

今の自分でできることを行動することはできるはずです。

厳しいようですが、

意欲がないから、

希望が見えないから、

してもどうせ無駄だから、

自分は心の病気であるから、

誰も助けてはくれないから、

誰も分かってくれないから、

だから、何も努力しない…

それは病気ゆえのことではなく、あなたの性格反応からのことです。

治りにくい状態にある方ほどいい意味での努力が必要です。

もちろん一人では困難な努力です。

今では、お薬や診察以外に訪問看護による援助や家事援助を受けることができるようになっています。

お一人で闘う必要はありません。

解決のための社会的支援を併用しつつ、それでも解決が難しくても、

面接のなかで、握り締めない争わない向かおうとしない心の構えを話し会うことができるなら、

きっとあなたの生きる意味を感じられるようになるなのではないでしょうか。

それは、たぶん、言葉で言い表せられるような状態ではないでしょうけれど…

私は、そう信じています。

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