強迫性障害の治療に思うこと
強迫性障害の治療に思うこと
典型的で一般的な強迫性障害に対して、
精神分析など、一世を風靡した治療法が、
ほとんど効果がないことが明らかになり、
副作用がなく、かつ有効な唯一の治療法が行動療法であるとする専門家が多いのですが、
ほとんど行うことが困難なようなのです。
強迫性障害に対して有効な治療は、
行動療法=「暴露+反応妨害」です。
強迫性障害に対して、
「SSRI+暴露+反応妨害」という組み合わせが最良とする専門家も多いのですが、
SSRI単独、暴露+反応妨害、その組み合わせで治療成績に差がないという報告もあります。
しかし、暴露+反応妨害が有効な治療法であるとの見解は確定的であることだけは確かでしょう。
イギリスに精神疾患助言サイトrcpsych.ac.ukの記載によれば、
薬物療法での改善率は約60%くらいで、効果感は苦痛が半減くらい、
暴露反応妨害では、効果感も相当あり、改善率は75%くらいですが、
暴露反応妨害をできない人が25%ほどもいるとのことです。
再発確率は、
暴露反応妨害で25%、薬物療法で50%くらい。
重症であれば薬物療法と暴露反応妨害を併用するのが望ましいとしています。
私は行動療法の専門家ではありませんが、
患者さんにエビデンスとしての知識として暴露反応妨害についてお話はします。
しかし、一様に「そんな恐ろしいことはとてもできないので、お薬で治療してください!」と言われてしまいます。
行動療法の専門家の先生方なら上手い動機付けができるのでしょうけど。
推薦図書にもあげている、リー・ベアー氏の「強迫性障害からの脱出」という啓蒙書を読めば、
勇気が出て専門家から行動療法を受けようと動機付けられるかもしれません。
お薬で治療した場合、効果があったとしても、
お薬を止めればほどなく再燃するでしょう。
幸運にもお薬で症状が完全になくなってしまえば、
症状がなくてもさらに1年以上服薬を継続すると、治癒する可能性はあるでしょうけれど、
お薬だけで強迫症状がなくなってしまうことは稀ではないでしょうか。
暴露反応妨害を、リー・ベアー氏の言うように協力者と二人三脚で実行すれば、
お薬に頼らず症状をコントロール(治るのではなくあくまでコントロール!)できるでしょう。
そうなれば、何よりのメリットは通院しなくても自分で治療できることです。
でも、しようとはしない!
怖いことを回避したいということだけではなく、
お薬の方が手間いらず!という要素に加え、
日本では医療費が元々安いうえ、公的健康保険制度があるので、
自己負担が極端に少ないことも行動療法を行おうというモチベーションを下げているのではないかと思ってしまうのです。
1回受診してお薬代も含めて何万円も取られるなら、
行動療法を行おうという人は飛躍的に増えるのではないかと思うのですが。
ところで、もし私が強迫性障害になったらどうするか?
私なら効果が得られるまで、SSRIを増量し、最高量に達しても効果がないなら、
もう1つSSRIを重ねて、
それでも効果がないなら、
エビデンスのあるリスペリドンをさらに併用服薬します。
そのうえで、不安と嫌悪感の低減に応じて、
暴露反応妨害と、強迫観念をそのままにしておくというヴィパッサナー瞑想を併用します。
行動療法の専門家の先生方は、自分が強迫性障害になったらどうされるのでしょうねぇ…