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うつ病で休職する人の約8割はズル休み!って本当?

うつ病で休職する人の約8割はズル休み!って本当?

エセうつ病?

「ダイヤモンド・オンライン」の記事に衝撃的な見出しが目に飛び込んできました!

『うつ病休職者の8割が病気にあらず、コロナで急増の「社会的うつ」の正体』というものです。

近畿大学奥田祥子教授へのインタビューからの記事でしたが、「うつ病」と診断されて休職する人の8割は「うつ病」ではなく「社会的うつ」であると奥田教授は主張しているというのです。

しかし、この記事に感じるところがあったのでコンテンツにすることにしました

当院での「うつ病」診断の実情

私のクリニックに「うつ状態」で受診された方を「うつ病」であると診断することは少ないものの、「うつ病」でなくとも休業診断書を書いて休業してもらうことは結構あります。

奥田教授が言っているように、「うつ状態」で受診された人の8-9割は「うつ病」とは診断されません。多くの場合は職場不適応すなわち「適応障害」と診断されるのです。

不適応の内容(要因)として、対人折衝が苦手な人が飛び込み営業をしなければならなくなっているとか、正義感の強い人が自分ではいいとは思わない商品を売らないといけないとか、パワハラ、セクハラ、モラハラなどにあっているとか、超長時間労働であるとか、ほんとうに色々なことにストレス反応を起こして「うつ状態」に陥ってしまいます。

しかし「うつ状態」=「うつ病」ではありません。「うつ病」と診断されるためには、国際診断分類(ICD-10)や精神疾患の分類と診断の手引(DSM-5)の診断基準に従って「うつ病(=大うつ病エピソード)」の基準が満されねば「うつ病」と診断されないのです。

現在の診断システムでは「うつ病」になる原因の内容に関係なく、表面に現われている症状の数と程度により「心の病気」に病名がつけられますが、「うつ病」というまでの病状にある人はそこまで多くはありません。

「うつ病」でなくても休業が必要な人は多い!

「うつ病」でない「うつ状態」の人が休業する必要がないとはいえません。「気分変調症」であるとか「持続性気分障害」であるとか診断されても、あるいは、「適応障害」との診断であっても休業して療養に専念した方がいい人は大勢ます。

「社会的うつ」の問題点と疑問点

「ダイヤモンド・オンライン」の記事によれば、例えば新型コンロナウイルス渦でテレワークとなった人が、孤立感を深めたり職場の問題に気づいてしまったりして、通常勤務に戻ることでメンタルの不調をきたし、「うつ病」の診断で休職することになる可能性があるけれど、その大半は「うつ病」ではなく「病人」とは言えない「社会的うつ」状態であるとというのですが、本当でしょうか?

奥田教授の考えでは、

「過重労働、パワハラなどの職場の問題でストレスをため、悩んでいる人が自覚する、うつ病に似た軽い症状が、医学的な診断基準に該当しないのに、軽症の『うつ病』と診断され、会社を休職すること」
以上引用

になるというのです。

要するに、仕事でのストレスで軽い「うつ状態」となった人が、精神科で「うつ病」による休業診断書をもらって会社を休む状態を「社会的うつ」だというのですね。

「社会的うつ」の問題点を奥田教授は次の様に指摘しています。

  • 「うつ病で休業が必要という診断書」が免罪符になる
  • パワハラや長時間労働などの職場の問題が労働者の「心の病」という個人の問題にすり替えられる
  • 個人の問題とされることで職場の問題が改善されなくなる
  • 雇用者側は労働問題の解決を棚上げにしてメンタルヘルスにチカラを入れているとアピールして、「うつ病」と診断れた「エセうつ病」で休業する人が増える
  • 本当は「うつ病」でない人が「うつ病」であるとして休職し、国も社会も経済的な損失を被る

でもどうでしょうか。「うつ病」に似た軽い症状である病状は「適応障害」と診断できます。職場のストレス→ストレス反応の発生→「うつ状態」が病的レベルに増悪した状態です。「うつ病」で合ってさえ重度のうつ状態ではないかがり「うつ状態」に抗うつ薬は効果はなく、ストレス環境の調整が治療の本してであるというのが現在のスタンダードな考え方です。

  • 注)ストレスとは状態のことであり、ストレス状態を誘発した要因をストレッサーと言いますがここでは区別しないことにします)

患者さんが休みたいからという理由ではなく、休業させなければ職場環境を変えられないという現実に目を向けるべきでしょう。福利厚生のシッカリしている企業では、休業することなく産業医や保健師と相談することで職場の環境を調整することができるでしょう。しかし、その様な企業さんは多くはないというのが現実です。

助けを求めてやってくる人に、環境を変えてもらうことが本質だから休業せずに頑張って会社に業務の軽減を働きかけましょう!とアプローチしたならば、受診してきた人が最悪、自殺するリスクを高めることになってしまうかも知れません。

社会的損失を云々するなら、休業による社会的損失よりも自殺による社会的損質の方がはるかに大きいことに目を向けるべきではないでしょうか。「うつ病」の大衆化によって安易に「うつ病」と診断すべきではないとの考えには同意します。しかし、「うつ病」でなくても休業させて環境調整をおこなうことが望ましい人は沢山いるのです。

休業してもらうことが、職場の問題を個人の問題にすり替えてしまうという考えには諸手を挙げて賛成することはできません。一理はあるものの、極言過ぎるのではないでしょうか?
 
ただ、企業など雇用する側は、労働問題の解決に真剣に取り組み、過重労働やパワハラを企業へ訴え、労働問題を改善していくべきであるとの意見には100%賛同いたします。休業にならなければ職場閑居を改善できないという現状をなんとしても変えていってもらいたいと願って止みません。

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