『発達障害の僕が「食える人」に変わった凄い仕事術(借金玉 著)』を読んで思ったこと
『発達障害の僕が「食える人」に変わった凄い仕事術(借金玉 著)』を読んで思ったこと
この本は注意欠如多動性障害と自閉症スペクトラム障害に双極性障害(躁うつ病)が併発されていると診断されている著者が、
- 整理できない
- 忘れてしまう
- 空気が読めない
という発達障害の特性と躁うつ病のうつ病相のときの対処法について書いている本です。
わたしが興味をひかれたのは、うつ病相時の「何もしたくない」という著しい意欲低下に対する対処法と、「死にたい」という希死念慮に対する考え方でした。
その中でも医療人として考えさせられたのは、「何もする気がしない」という状態への対処法についてです。
医学的には、病気になってから1〜3ヶ月くらいまでは休息中心で療養するとしても、それ以後も意欲が改善してこないなら徐々に散歩などのような体を動かすこと、専門用語で言うところの行動の活性化」を行うのがいいと考えています。
でも、半年以上も気分の低下が改善せず、何もする気が起こらないで無為に過ごすことしかできない患者さんが多いのも、日常の診療でよく経験するものです。
このようなとき、少しずつでも体を動かしていこうと助言しても、実際にできる人がほとんどいないという現実に、こちらが無力さを感じてしまうことがよくあります。
本書の著者である借金玉さんは、躁うつ病のうつ病相のとき、やはり何もする気がせずにトイレに行くのも面倒で体を動かせず失禁してしまったのだそうです。
そして、それでも体を動かせずに尿臭に耐えながら床から出られなかったといいます。
布団の中で手をグッパグッパするだけでもいいので始めてみましょうと提案しても、それさえできない方々がいるのも事実なのです。
借金玉さんが自分の体験から実感したのは、「動こうという気持ちになるまで何もしないという決断をする!のがいいということであったと本書の中で述べています。
医師の側からではなく、病気になってしまっている当事者からすれば、動こうという気持ちが回復してくるまでは、「動かないといけないと思うけれども動けないの…」と思い悩むよりは、「僕はあえて動く気持ちになるまでは動かないという選択をしているのだ!」という選択を自ら行なうことが自己評価のさらなる低下を防ぐことになるというのです。
この本を読んで、病者の側からの思いをシッカリと受け止めないといけないのだなあ、と考えさせられたのでした。
この本には「うつ」への向き合い方にプラスとなる病者側からの構えがいろいろ書いてあります。
もちろん、
ADHDの人向きの「カバンの選び方」だとか、ファイルホルダーではなくバインダーを使って資料をすべて一箇所にまとめて「し忘れを防止する方法」、発達障害の当事者としての発達障害への対処法」にも数多く言及しています。
発達障害、特にADHDの方は読んでみて損はない実用的なアイデアが結構あるのではないでしょうか。