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ADHDの治療薬の種類と特徴_出せる病院と出せない病院がある?

ADHDの治療薬の種類と特徴_出せる病院と出せない病院がある?

近年、ADHDと診断される人が増加しています。日本に限っていうなら、平成12年5月に発売された『片づけられない女たち』(サリ・ソルデン著:ニキ・リンコ訳)というADHDについての本が出版されてからでしょう。当時はADD(注意欠陥障害)と呼ばれていましたが、この本を読んで自分がADHDではないかと疑って受診する人が増えてきたのでした。今ではネット情報からが圧倒的に多いですね。さらにはADHDに効果のあるお薬が発売されてから、自称ADHDの方も含めて精神科クリニックを受診する方が増えてきています。

ADHD(注意欠如/多動性障害)とは日本語病名表記に示されているように「注意の障害」と「多動」、そして日本語病名には表現されていない「衝動性の問題」という3つの領域に問題が生じる発達障害です。脳で情報を伝える神経伝達物質と言われるものの中で「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」が不足することで生じていると考えられています。その治療の本質は教育と訓練にあるのですけど、薬物療法も重要な治療の選択肢となります。今回はADHDの治療のうち薬物療法で使用される3種4剤の薬について解説します。

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ADHDの薬
出典:Photo by little plant on Unsplash

ADHDの治療薬は3種4剤

ADHDの治療薬には次のように3種4剤あります。

  1. 神経刺激薬2剤(商品名:コンサータとビバンセ)
  2. ノルアドレナリン再取り込み阻害薬1剤(商品名:ストラテラ)
  3. 選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬(商品名:インチュニブ)

ADHDのお薬であるこれら3種4剤は効果があるのですけど、各お薬の長所が異なります。また、副作用があることも他のお薬と同様です。ですから、各お薬の効果や副作用をしっかり知って適切なものを選択することが望まれます。

コンサータ(メチルフェニデート徐放錠)

即放錠であったリタリン(商品名)が不正使用が多発して「うつ状態」への適応が削除されるとともに、経験の十分な医師(例えば精神科専門医)が講習を受けて登録医となってしか投与出来なくなりました。そこで小児科での投与が出来なくなり、代わりにリタリンの徐放錠であるコンサータが認可されたという経緯のあるいわくつきのお薬です。

効き方のメカニズム

コンサータ(メチルフェニデート)は、ドパミンとノルアドレナリンを回収(再取り込み)する部位にくっ着いてドパミンやノルアドレナリンの再取り込みを妨害し、神経と神経の継ぎ目(シナプス間隙)でのドパミンとノルアドレナリンの濃度を増やすことで、神経系の情報伝達を改善し神経機能を改善すると考えられています。しかし、その作用はドーパミンについての方がノルアドレナリンよりも強く、僅かですがセロトニンにも作用します。

お薬の特徴

コンサータは即効性であり、基本的には服用した日から効果が現れます。かつて使えたリタリンのように「服用して2〜30分ほどすると嘘のように頭が晴れ渡って物ごとの整理ができるようになる」というような効き方はしません。何かいいような感じがする程度の効き方ですが、効果は12時間ほど持続します。

仕事で直ぐに効果が得られないとクビになるとか受験ですぐさま勉強できるようになる必要があるなど、ADHDの症状を直ぐに改善する必要性に迫られている人にはコンサータやビバンセなどどの神経刺激薬は適しているでしょう。

副作用

口の渇き、食欲不振、吐き気、便秘、不眠、眠気、頭痛、注意集中困難、神経過敏、動悸、頻脈、不整脈、血圧変動、不安、興奮、幻覚、妄想、発汗、ふるえ、チック、尿がでにくい、性欲減退、かすみ目、体重減少、子供の体重増加抑制・成長遅延、長期連用で効きが悪くなる、依存形成などがあります。

注意点

効果があるものの、服用しなかった日にはADHDの症状は全く改善されないので、お薬に依存してしまうリスクが高いです。神経刺激薬はいわば医療用覚醒剤のようなものですから当然と言えば当然ですね。

覚醒作用が強いので、朝飲み忘れて昼とか夕方とかに服用してしまうと、夜に眠れなくなる可能性が高いでしょう。また、朝方には体内に薬効成分が残っていないために、朝の準備や活動が本来の障害された状態に戻っているため、遅刻したり忘れ物をしたりする可能性もあるでしょう。

次に書いているように、このお薬とビバンセは出してもらえる病院が限定されることにも注意が必要です。

神経刺激薬はどこの病院でも出してもらえる訳ではない!

神経刺激薬であるコンサータとビバンセは、次のような条件を全て満たす医師のいる病院でしか処方してもらえません。なおかつ、処方する症例を登録しないと薬局でお薬がもらえません。

  1. 日本精神神経学会または日本小児科学会の認定専門医
  2. 日本小児神経学会・日本神経精神薬理学会・日本小児心身医学会・日本臨床精神神経薬理学会・日本小児精神神経学会・日本ADHD学会・日本児童青年精神医学会のいずれかの学会員
  3. 症例報告2例または公表論文1報以上している
  4. e-ラーニングを受講し受講後のテスト合格している

かなり厳しい基準です。

私は日本精神神経学会の認定専門医ですが、上記の要件とされる学会には入っていないのでコンサータやビバンセは処方できません。令和2年6月30日までは上記の2〜4の条件はなく、講習を受けて登録位となればコンサータを処方できていたのですけど、令和2年7月以降は処方できなくなってしまいました。

何やら患者さんが不正使用したようなのです。小児科で処方されたコンサータを不正使用するお子さんはいないでしょうから、精神科で大人に処方された患者さんもどきがコンサータを不正使用したということでしょう。ですから、今回の厳格化は精神科を狙い撃ちしたものだと思われます。真っ当に処方して真っ当に服用している患者さんにとっては迷惑な話です。

ビバンセ(リスデキサンフェタミン)

ビバンセの成分であるリスデキサンフェタミンは体内で薬理効果のあるデキストロアンフェタミンに変わることで効果が出るようになるお薬です。

効き方のメカニズム

ビバンセ(リスデキサンフェタミン)は、体内で薬理作用のあるデキストロアンフェタミンに変わり、ノルアドレナリンとドパミンの再取り込みを行う部位の働きを阻害したり、ノルアドレナリンとドパミンの放出を促進する働き、さらにはノルアドレナリンなどを分解するモノアミン酸化酵素A(MAO-A)の働きを阻害するなどの働きをして、脳内のノルアドレナリンとドパミンを増やすことでADHDの症状を改善するものと考えられています。

お薬の特徴

コンサータと同じようなものです。しかし、コンサータに比べて効果が強く作用時間も長いとの評価があります。

副作用

頻脈、血圧上昇、動悸、レイノー現象、精神神経系 不眠、頭痛、めまい、易刺激性、チック、眠気、感情不安定、激越、振戦、怒り、不安、多弁、リビドー減退、うつ病、不快気分、多幸症、歯ぎしり、自傷性皮膚症、精神病性障害、躁病、幻覚、攻撃性、落ち着きのなさ、精神運動亢進、痙攣、ジスキネジア、味覚異常、食欲減退、悪心、腹痛、下痢、嘔吐、便秘、口内乾燥、腹部不快感、体重減少、疲労感 、霧視、散瞳、呼吸困難、好酸球性肝炎、多汗症、胸痛、びくびく感、発熱、勃起不全など多数。中でも食欲減退(79.1%)、不眠(45.3%)、体重減少(25.6%)が相当な割合で認められます。

注意点

コンサータと同様です。また、コンサータと同様、ビバンセを処方できるようになるには、医師はe-ラーニングの受講をして、関連学会への参加状況やADHDの症例報告や関連論文等の執筆などが求められます。

ストラテラ(アトモキセチン)

日本ではコンサータやビバンセを処方できる病院が限られているため、恐らくADHDの治療薬として最も使用されていると思われるお薬です。海外の基準でも神経刺激薬と同様にADHDに対して第一に使用するお薬と位置付けられています。

効き方のメカニズム

主にノルアドレナリンの再取り込みを抑えることで、脳内の(正確にはシナプス間隙の)ノルアドレナリン濃度を高めて、ノルアドレナリンを受け取る側の神経のレセプターにノルアドレナリンが引っ付く確率を高めることで神経機能を改善しADHDの症状を和らげます。

お薬の特徴

非中枢神経刺激薬であるため依存性や耐性がなく、どこの精神科でも処方してもらえるお薬です。直ぐに効果が現れる人もいるにはいますけど、普通は効果が現れるまでに数週間から数ヶ月かかるので、効果のあるなしを性急に判断しないようにする必要があります。

副作用

主な副作用は食欲不振や吐き気、腹痛などですが、吐く、腹痛、下痢、口渇、頭痛、眠気、不眠、立ちくらみ、めまい、怒りっぽい、攻撃的、敵意の発現または悪化、動悸、頻脈、心拍数増加、血圧上昇、排尿困難、勃起不全、多汗症、味覚異常、体重減少、成長遅延なども出ることがあります。

注意点

服用しはじめに消化器系の副作用が出やすいので、飲み始める時に吐き気止めも一緒に処方してもらった方がいいかも知れません。

インチュニブ

海外ではセカンドラインといって、ADHDに対して第一に処方するお薬ではないと位置付けられています。他のお薬では副作用が出て服用できない場合に使用するということですね。

効き方のメカニズム

アドレナリンα2A受容体を刺激することでADHDの症状に効果を発揮します。中枢神経のアドレナリンα2A受容体を刺激することで神経伝達を強めることができ、ADHDの症状を改善すると考えられています。先に述べた3剤が、神経伝達物質を増やすことで神経伝達を改善するのとは違い、伝達物質は増やさないけれど、伝達効率を高めることで神経機能を改善するというメカニズムですね。選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬と呼ばれています。

お薬の特徴

チックのある方に特に適していると思われます。また、衝動性の抑制効果が高いと評価する人もいます。他のお薬と全く作用メカニズムが異なるため、他剤との併用もしやすいと考えられています。

副作用

最も多い副作用は眠気です。50%以上の人に眠気が生じます。その他、滅多にないのですが、低血圧、徐脈、めまい、ふらつき、立ちくらみ、息切れ、冷感、動悸、脈が飛ぶ、脈が1分間50以下になる、気が遠くなる、意識低下、気を失う、房室ブロック、動悸、脈が飛ぶ、息切れ、息苦しい、胸の不快感・痛み、転倒などが生じることがあります。頭痛、倦怠感、気分がしずむなども見られることがあります。

注意点

いろいろな薬と相互作用を起こすおそれがあるので、お薬によってはインチュニブの作用が増強したり、逆に作用が弱くなる可能性もあります。使用中の薬を必ず主治医に伝えるようにしましょう。

まとめ

ADHDの治療薬の概略を解説しました。必ずしも自分で使ってもらいたいお薬を処方してもらえる訳ではありませんが、各お薬の特徴を知っていて損はありません。参考にしていただければ幸いです^ - ^

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