うつ病の再発再燃を予防するのに優れた治療法は何か?
うつ病の再発再燃を予防するのに優れた治療法は何か?
うつ病になると半分の人は再発すると言われていますけど、治療法によって再発率に優劣はあるのでしょうか?それに関する研究があったので紹介します。京都大学からの報告です。
成人の「うつ病」の治療について、以下の5つの治療法について比較したようです。
- 心理療法
- 薬物療法
- 心理療法と薬物療法の併用
- 標準的治療
- 偽薬(プラセボ)による治療
経過を観察した期間は約6〜26ヶ月間(平均で約10.5ヶ月間)とのこと。なお、ここでの薬物療法とは推奨されているキッチリとした定型的な方法(プロトコール化されたもの)での薬物療法です。
薬物療法だけ行われた人との比較
薬物療法だけの人に比べて、ネットワークメタ分析という評価分析による治療効果の持続性は、
- 心理療法と薬物療法の併用では2.52倍
- 心理療法と薬物療法の併用後に任意の治療に移行した場合は1.80倍
- 心理療法だけ行われた場合は1.53倍
- 心理療法終了後に任意の治療に移行した場合は1.66倍
上記のどの治療法でも薬物療法のみの場合よりも治療効果が持続的であったということらしいです。なお、任意の治療とは任意の薬物療法と支持的面接と生活指導など主治医の判断で行われた治療と思われます。
標準的治療だけ行われた人との比較
標準的治療の人に比べて、ネットワークメタ分析という評価分析による治療効果の持続性は、
- 心理療法と薬物療法の併用では2.90倍
- 心理療法と薬物療法の併用後に任意の治療が行われた場合は1.76倍
- 心理療法だけ行われた場合は1.53倍
- 心理療法終了後に任意の治療に移行した場合は1.83倍
うつ病の再発再燃を防ぐのは意外と難しい!
観察期間中の標準的治療で治療効果の持続性は平均で29%であったというので、心理療法もしくは心理療法と薬物療法の併用により治療の持続性を41〜45%にまで再発再燃を防止できると考えられるとしています。
情報源
Toshi A Furukawa, Initial treatment choices to achieve sustained response in major depression: a systematic review and network meta-analysis. World psychiatry : official journal of the World Psychiatric Association (WPA). 2021 Oct;20(3);387-396. doi: 10.1002/wps.20906.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/wps.20906
余録「ネットワークメタ分析とは?」
3つ以上の治療法の比較が可能な分析手段です。例えば「治療法Aと治療法Bの比較」をした研究および「治療法Bと治療法Cの比較」をした研究があって、「治療法Aと治療法Bの優劣」の結果および「治療法Bと治療法Cの優劣」の結果が分かっていたとします。この時、「治療法Aと治療法Cの優劣」を比較した研究がなくても、「治療法Aと治療法Bの比較」の発表データと「治療法Bと治療法Cの比較」の発表データを分析して「治療法Aと治療法Cの優劣」を導き出す統計的分析手法がネットワークメタ分析です。難しいですね。わたしには具体的なことは分かりません。