「うつ病」の原因はストレスとウイルスって本当?
「うつ病」の原因はストレスとウイルスって本当?
なんと「うつ病」の原因の1つがウイルスに起因するということが分かりました。東京慈恵会医科大学の近藤一博氏らによる研究成果ですけど、ノーベル賞級の価値のある研究であるとか。紹介する時期を書いてみました。興味ある方はご一読ください^ - ^
科学研究費助成事業の研究成果報告書( https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-16H07220/16H07220seika.pdf )「疲労によって誘導されるウイルス因子がうつ病発症に与える影響の解析」から内容をまとめてみました。
これまでに分かっていたこと
- ストレスにさらされたとき「うつ病」になるか否かは個人差が大きい
- 「うつ病」は遺伝的な影響が少ない
- 「うつ病」の原因遺伝子は網羅的遺伝研究でも発見されてない
- 脳の細胞(アストロサイト)で潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス(HHV-6)が産生するSITH-1というタンパク質が同定されている
新たに分かったこと
- SITH-1は
- 「うつ病」患者の約60%に検出される
- 健常人では2.5%にしか検出されない
- SITH-1をもつマウスは
- ストレスに弱い
- ストレス負荷により「うつ病」様の行動が生じ易い
- SITH-1マウスは対照マウスと比較して
- ストレス関連因子の1つであるCRH(コルチコトロピン放出ホルモン)の発現が高い
- ストレス反応を司るHPAaxis(視床下部-下垂体-副腎軸)が異常亢進している
- 嗅球という脳の部位でのアポトーシス(あらかじめ予定されている細胞の死)が有意に多い
- これは「うつ病」の人の嗅球萎縮と一致した初見である
- 海馬における神経新生が有意に抑制されている
- これは嗅球切除マウスで海馬の萎縮が観察されるのと同じ現象が生じていると考えられる
以上の所見より、SITH-1マウスでは以下のようなメカニズムが生じて「うつ病」になりやすくなると考えられる。
嗅球でアポトーシスが誘導され
↓
海馬の神経新生が阻害され
↓
HPA axisが異常亢進し
↓
ストレス応答反応に異常が生じ
↓
これによりストレス脆弱性を引き起こされ
↓
「うつ病」になりやすくなる
私見
ヒトヘルペスウイルス(HHV-6)は小児期によくみられる突発性発疹の原因ウイルスで、およそ9割以上の成人に潜伏感染しているとされています。臓器移植後のHHV-6再活性化による脳炎や薬剤過敏症症候群と関連があるともされています。それはともかく、上記の研究では、HHV-6により産生されるSITH-1が「うつ病」患者の約60%に検出されるが健常人では2.5%にしか検出されないということですので、HHV-6に感染している人でSITH-1が産生される人が「うつ病」になりやすいということでしょうか?HHV-6に感染してSITH-1を産生する要因は何かということになりますけど、これについては研究されていないようです。このようなことからすると、HHV-6への感染自体が「うつ病」の発症要因となるとは言い難いようですね。