適応障害とはどんな病気?分かりにくいその正体
適応障害とはどんな病気?分かりにくいその正体
ニュースでもときに耳にする適応障害という病気があります。適応障害はストレス関連障害の1つであり、仕事や対人関係などのストレス要因から生じる心の病気です。しかし、この適応障害、意外と分かりにくい病気です。うつ病といえば大まかなイメージは浮かぶのですが、適応障害はというとあまりそのイメージが浮かんできません。そこで、適応障害の分かりにくさと病気の概要について解説してみました。
ストレスについて
まずはじめにストレスとストレッサーという言葉を知っておく必要があります。この2つの言葉は区別なく使われることが多いのですが、ストレスとは、「ある状況により引き起こされた心や体の中で生じている通常ではない状態」のことを指し、ストレッサーとは「ストレスを生じさせる原因」のことをいいます。ここではストレスをストレス状態、ストレッサーをストレス要因と呼ぶことにします。
ところで、ラザルスは心理的ストレス状態について、人がある困難に出くわしたとき、
- その困難をどれくらい上手く対処できるかという見積もりによってストレス状態の強さが決まる
- さらにそれらへの対処が過去にどれくらい上手くできたかの度合いによって、ストレス状態の強さが上積みされる
としています。このストレス状態が病的なレベルまで高まって、生活に支障が生じている状態が適応障害です。
適応障害の診断基準とその分かりにくさ
国際疾病分類(ICD10)による適応障害の定義を大まかにまとめてみると、
- (1)ストレス要因がなければ生じなかったと考えられる
- (2)症状が多彩(下記)だが1つ1つの症状は特定の診断を下せるほどにはひどくない
- うつ
- 不安
- 心配
- 対処できないという感じ
- 突発的に大変なことをしてしまいそうだと感じる
- 暴力行為を起こしてしまいそうだと感じる
- (3)他の精神疾患によるものではない
- (4)ストレス要因の発生から1か月以内に発病する
- (5)症状は通常6か月以上続かない
- 下に示した遷延性抑うつ反応はこの限りではない
ということになります。なお、うつ状態が主であるときは、
- 発病から1か月未満で治るものは短期抑うつ反応と呼ぶ
- 発病から1か月以上2年未満は遷延性抑うつ反応と呼ぶ
- 2年を超えたときは別の病名(気分変調症など)とする
となります。その他、不安とうつ状態が同じ程度に持続しているときや、不安・抑うつ・苦悩・緊張・怒りなどいくつかの領域に主たる病状があるとき、攻撃的であるなどの行為の障害をともなうときは以下のように下位分類されます。
- 混合性不安抑うつ反応
- 主として他の情緒の障害をともなうもの
- 主として行為の障害をともなうもの
- 主として情緒と行為の障害をともなうもの
- 他の特定の症状が優勢なもの
などです。本当にややこしく分かりにくい病気ですね。
雅子さまは適応障害?
適応障害といって直ぐに思い浮かぶのは、適応障害という言葉を世に知らしめる切っ掛けとなった皇后雅子さまのご病気です。皇后雅子さまの症状の詳細は報道されていないのですけど、もし皇后雅子さまの症状がうつ状態であるのなら、適応障害の病名がつけられるのは最長でも2年未満であることから、少なくとも2年以上たっている現在の病名は適応障害ではないことになります。ところが、国際疾病分類と同様に権威があるアメリカ精神医学会による精神障害の診断と統計マニュアルによれば、ストレス要因が持続するときには慢性の適応障害として適応障害の診断を継続して使えるようになっています。雅子さまは、国際疾病分類では適応障害ではないけれど、精神障害の診断と統計マニュアルでは慢性の適応障害であるということになります。適応障害は、専門家が診断するときでさえ診断基準の違いにより診断が変わるのですから、素人には本当に分かりにく病気なのです。
適応障害イエローカードリスト
この分かりにくい適応障害ですが、ストレス要因が原因となって生じるうつ病などよりも症状の程度は軽い病気です。軽症であるから、うつ病などよりは生じやすいといえます。ですから適応障害の兆候に早く気づいて対処する必要があります。適応障害の兆候として、次のような症状がリストアップされます。
- 落ち込み、意欲低下、不安、怒り、焦り、緊張などの精神面での持続する不快感
- 暴飲暴食
- 無断欠席
- 運転が荒くなる攻撃的になるなどの行動上の問題
- 動悸、発汗、めまいなどの身体的症状
これらの兆行が持続しているときには適応障害になっているかもしれません。早期に専門家に相談する方がいいでしょう。
まとめ
適応障害は分かりにくい病気ですけども、誰でもかかる可能性が高い病気です。先に述べたように、診断基準によって微妙に判断の基準が異なっていて素人には分かりにく病気でもあります。類似するうつ病との違いは重症度の違いといえます。うつ病ほどは酷くはないものの、厚生労働省のみんなのメンタルヘルスによれば、適応障害の40%以上の人が、適応障害と診断されてから5年後にはうつ病などに進展していルトのこと。症状の軽いうちに治療を含めた対処を行う方がいいということですね。
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