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うつ病の改善を測定する目印因子(バイオマーカー)

うつ病の改善を測定する目印因子(バイオマーカー)

うつ病にかかっても早く治る人となかなか治らない人がいます。早く治るか長引くか、これらを事前に予測することが出来ないのが現状です。なんとか早期にうつ病が改善するかしないかを予測する方法はないかと思っていたところ、予測が可能であるとの論文が日本の研究者から報告があったので記事にしました。NTT西日本九州健康管理センターの研究です。

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うつ

抗うつ薬として代表的な薬剤である「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」と有効性に優れていると思われる抗うつ薬の「ミルタザピン」の治療反応と「腫瘍壊死因子、サイトカインであるインターロイキン-1β、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン-6、インターロイキン-8、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子」についての関係を酵素結合免疫吸着測定法という処方を用いて調べたとのこと。結果は、

  • ミルタザピン治療群の非寛解者よりも寛解者で
    • ベースライン時の腫瘍壊死因子レベルが有意に高い
    • インターロイキン-2レベルが有意に低い
  • SSRI治療群の非寛解者よりも寛解者で
    • ベースライン時の顆粒球マクロファージコロニー刺激因子レベルが有意に高い

これらの結果より、ミルタザピン治療群では、腫瘍壊死因子とインターロイキン-2の値が早期の改善を予測することが示唆された。なお、

  • ミルタザピン治療群の寛解率が31.3%から
    • 腫瘍壊死因子の高値群は60.0%に増加する
    • インターロイキン-2の高値群50.0%に増加する
  • SSRI治療群の寛解率が37.0%から
    • 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の高値群は70%に増加する

以上のことが推定されたとのこと。

サイトカインとは、『主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質で、標的細胞表面に存在する特異的受容体を介して極めて微量で生理作用を示し、細胞間の情報伝達を担う。(腸内細菌学会https://bifidus-fund.jpより)』
酵素結合免疫吸着測定法Enzyme-linked Immunosorbent Assay(ELISA):抗体検査の測定方法で、酵素標識した抗原と抗体を反応させて検出する方法。

私見

クリニックレベルでは測定できないので臨床的な応用は遠い将来になるでしょうね。うつ病の予後を予測できるのには、まだまだ時間がかかりそうですね。

情報源

Kiyokazu Atake et al,Pre-treatment plasma cytokine levels as potential predictors of short-term remission of depression.The world journal of biological psychiatry : the official journal of the World Federation of Societies of Biological Psychiatry. 2022 Mar 09;1-9. doi: 10.1080/15622975.2022.2045354.

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