妄想の形式による分類
妄想の形式による分類
妄想とは、了解不能の内容を、根拠なく確信しており、合理的で明確な根拠を示しても訂正不能である思考内容のことですけど、妄想には色々な形式があります。ここでは妄想の形式からの分類について紹介します。
まず、妄想の形式は一次妄想と二次妄想に分けられます。一次妄想とは、妄想の発生根拠が理解できない妄想のことであるのに対し、二次妄想は、その人の精神症状や気分状態、これまで体験してきた生活史の出来事や状況、帰属しているコミュニティの価値観や信念、その人の性格要因などから、妄想内容の発生が理解(了解)可能な妄想です。
一次妄想
一次妄想の形式には
- 妄想気分
- 妄想着想
- 妄想知覚
の3つがあります。
妄想気分
自分に何かとんでもない恐ろしいこと生じているという著しい不気味な気配を感じているけど、具体的に何が生じているかは分からないというのが妄想気分です。
妄想知覚
合理的あるいは感情的に理解(了解)可能な根拠がないにもかかわらず、自分が知覚したことに異常な意味付けが生じて生じる妄想です。たとえば、バス停でこちらを見ている人を見て、「自分を監視ている組織があり、自分を狙っている」と根拠なく分かったとか確信するなどです。バス停にいる人→その人はこちらを見ている→見ているのは監視しているからだ→監視しているのは狙っている組織があるというような異常な意味づけが、見たという知覚に付与されるという流れになります。
妄想着想
妄想に突然着想して直ちに確信されるという形式の妄想です。妄想が着想されるのには切っ掛けなく生じることも、何かを見たことがトリガーとなって生じることもあります。後者の例は、パトカーを見かけた時、理由もなく突然いきなり「自分は指名手配されている」と着想するなどですね。妄想知覚と知覚がトリガーとなる妄想着想の違いは、知覚に異常な意味付けがなされるか否かです。妄想知覚では、「パトカーを見た→パトカー=警官→警官は犯人を捕まえる→警官が自分を捕まえようとしている→それは自分が指名手配されているからだ」となるのですけど、妄想着想では、「パトカーを見た→自分は指名手配されている」というように、パトカーを見たという知覚に異常な意味づけをすることなく、「指名手配されている」という妄想が直接突然生じるという塩梅です。
二次妄想
二次妄想は最初に書いたように、精神症状や気分状態、これまで体験してきたこと、所属しているコミュニティの価値観や信念、その人の性格要因などから、妄想内容が理解(了解)可能な妄想です。特に、不安感や不信感など、気分に沿った解釈が妄想化するものは、妄想反応といわれます。仕事で失敗した時に、それを思い悩んで不安になったり憂うつになったりすることで、「職場で悪口を言われている」などという被害関係妄想が生じるのがこれでしょう。また、うつ病で生じる貧困妄想なども一例ですね。
私見
妄想ってややこしいですね。私の解釈では、「根拠のない内容」を「真実であると確信」し、明確な反証を提示しても「確信を訂正できない」思考内容のことを妄想と考えています。要するに、
- 了解不能
- 確信
- 訂正不能
という3要素を備えているのが妄想であるというのが私の見解でしょうか。