望ましい睡眠薬とは?
望ましい睡眠薬とは?
科学的な根拠を十分に分析検討して作られている米国睡眠学会の睡眠薬治療ガイドライン(2017年)により公表されている「評価が高いとされる睡眠薬」について紹介します。評価が高いというのは、睡眠薬によって得られる効果と副作用(有害事象)のバランスが良いという意味になります。副作用がないお薬はないので、効果が十分で副作用が少ない睡眠薬がバランスの良いお薬ということになるのですが・・・
寝つきの悪さと中途覚醒に効果があるバランスの良い睡眠薬
これらの条件を満たすものは以下の2剤のみとのことでした。
- ゾルピデム(先発品商品名マイスリー)
- エスゾピクロン(先発品商品名ルネスタ)
ただし、1-2カ月程度の使用に限定された評価であるとのことです。
私見
睡眠薬の注意すべき副作用には次のようなものがあります。
- 依存性リスク
- 筋弛緩作用などによる転倒・骨折のリスク
- 認知機能の一時的低下リスク
- 長期使用で永続的な認知機能低下の誘発リスク
- せん妄(特殊な意識障害)の誘発リスク
これらの副作用の中でも、わたしが一番の副作用と考えているのは「依存性」です。一定期間(2週間~2か月)以上、毎日、睡眠薬を服用していると、依存性が生じて睡眠薬がないと不安になって睡眠薬を欲するようになり、睡眠薬がないと眠れないというようにもなってしまいます。そのうえ、「反跳現象」というものもあって、長期にわたり睡眠薬を服用していると、心も体も眠れる状態になっているにもかかわらず、睡眠薬を急に止めるとより以上に眠れなくなるというのが「反跳現象」です。これら「依存性」+「反跳現象」の組み合わせによって睡眠薬がやめられない状態が生じ、5年も10年も20年も睡眠薬を飲み続けることになってしまうことにもなりかねません。ですから睡眠薬の服用にはよりバランスの取れたものを使用、不眠が改善したなら、「可能な範囲で早期に睡眠薬の漸減・中止を目指す」ことが大切ということになります。
情報源
Sateia, M.J., et al., Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med, 2017. 13(2): p.307-349.