漢方薬にもキツーイ副作用!
漢方薬にもキツーイ副作用!
食べ物にもアレルギーというものがあって、全ての人に食べ物が安全である訳ではないように、生薬である漢方薬にも命に関わるようなキツーイ副作用があります。今回は、漢方薬で生じる可能性のある重篤な副作用について書いてみました。
偽アルドステロン症
血圧を上昇させるアルドステロンというホルモンが増加していないにも関わらず、アルドステロンが増加したときのように、以下に示すような症状が段々と酷くなってくる病態です。グリチルリチンを含む漢方薬、かぜ薬、胃腸薬、肝臓の病気の医薬品でみられ、市販の医薬品でもみられることもあるのものです。
偽アルドステロン症の症状
- 血圧の上昇
- むくみ
- 手足のだるさ
- しびれ
- つっぱり感
- こわばり
- 力が抜ける感じ
- こむら返り
- 筋肉痛
症状の出現の仕方
「手足のだるさ」「しびれ」「つっぱり感」「こわばり」から始まり、「力が抜ける感じ」「こむら返り」「筋肉痛」が現れて、徐々にひどくなってきます。このような症状が現れれば、すぐにお医者さんに連絡しましょう。
原因
漢方薬に含まれるグリチルリチンが原因です。
甘草の含有量による発症率
グリチルリチンは甘草に多く含まれており、甘草の含有量が多いと発症しやすいようです。グリチルリチンが1日量で以下の割合ほど含まれていると次のような割合で偽アルドステロン症が発生するリスクがあるという報告があるそうです。
- 1gでは1.0%
- 2gでは1.7%
- 4gでは3.3%
- 6gでは11.1%
注意するべき漢方薬
下記に示したのが1日用量の甘草の含有量です。
- 甘草湯(かんぞうとう) 8g
- 痛みを和らげる働きがある
- のどの痛み、激しい咳、胃痛などに使う
- 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) 6g
- 内臓や筋肉筋の緊張をゆるめ急激な痛みを和らげる
- 胃痛、腹痛、胆石や尿路結石による疝痛、筋肉のつっぱり・こわばり・けいれんを伴う筋肉痛、こむら返り、神経痛、腰痛、肩こり、生理痛などに使う
- 芍薬甘草附子湯(しゃくやくかんぞうぶしとう) 5g
- 筋肉の緊張をゆるめて痛みをやわらげる
- 神経痛、関節炎、五十肩、肩こり、冷えによる痛み、手足のしびれ、こわばりなどに使う
- 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう) 5g
- 心身の興奮状態をしずめる働きがある
- 夜泣き、ひきつけに使う
- 小青竜湯(しょうせいりゅうとう) 3g
- 鼻カゼ、アレルギー性鼻炎に使う
- 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)2.5〜3g
- 吐き気や嘔吐、下痢などに効果があり
薬物性肝障害
医療用漢方薬を処方された7.1%の症例に漢方薬による肝障害が報告されているといいます。
漢方薬による肝障害の症状
- 倦怠感
- 食欲不振
- 発熱
- 黄疸
- 発疹
- 吐き気・おう吐
- かゆみ
などですが、軽い場合は自覚症状はありません。血液検査をしないと分からない場合があります。
肝障害の発生頻度の高い漢方薬
- 小柴胡湯(しょうさいことう)
- 胃腸や肝臓、呼吸器の働きを改善
- 体の免疫機能を調整する
- 炎症をやわらげる
- 柴苓湯(さいれいとう)
- 水瀉性下痢、急性胃腸炎、暑気あたり、むくみ等々に使う
- 葛根湯(かっこんとう)
- 風邪や肩こりに効く
原因
ハッキリと分かっていないのですけど、黄芩(おうごん)を含んでいる漢方薬に注意する必要があると言われています。必ずしもそうではないという報告もあり、明言はできないようです。
間質性肺炎
死に至る場合があります。
症状
- 息切れ
- 最初は階段を上がるときや重い荷物を持った時のみ
- 進行する普通に歩いたり日常的な動作でも生じるようになる
- 咳
- 痰は伴わない
注意する漢方薬
次の一択というわけではありませんが、以下の漢方が有名です。
- 小柴胡湯
- かつてウイルス性肝炎に使用されていた時期がありました
上記以外にも黄芩を含まない、
- 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)
- 肥満症、多汗症、むくみ等々に使う
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
- 痰の切れにくい咳などに効く
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 疲労感、倦怠感、病後の体力回復などに使う
- 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
- 排尿困難、頻尿、むくみ等々に使う
などでの報告もあるようです。
- 排尿困難、頻尿、むくみ等々に使う
対応
これはもう次のようなことに尽きます。
- 原因と思われる漢方薬を止める
- お医者さんに診てもらう
腸管膜静脈硬化症
腸管膜静脈の線維性の肥厚と石灰化により静脈の流れが障害され、腸粘膜の腫れや変色を来す腸の病変です。漢方薬によっても生じます。
症状
右側を主とした腹痛、便秘、下痢、嘔気、嘔吐、血便などが見られます。腹痛が最も多く45%ほどで、下痢、腹部膨満、腸閉塞などがその次に多く、4分の1弱の人は無症状とのことのようです。
原因
一部の漢方薬に含まれる山梔子(さんしし)が原因と考えられています。
注意すべき漢方薬と山梔子の含有量
以下の漢方薬を4年以上内服している場合もしくはトータルの使用量が5,000gを超えているときは要注意です。腹部CTなど専門医で検査する方が良いでしょう。
- 加味逍遙散(かみしょうようさん) 2g
- 月経不順、月経困難、更年期障害などに使う
辛夷清肺湯(しんいせいはいとう) 3g - 鼻づまりに効く
- 月経不順、月経困難、更年期障害などに使う
- 茵蔯蒿湯(いんちんこうとう) 3g
- 黄疸、肝硬変症、ネフローゼ、じんましん、口内炎などに使う
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう) 2g
- 機能の亢進をしずめ、のぼせ、ほてり、イライラ感、不眠、動悸、胃炎、鼻血などの出血、高血圧にともなう頭重感や肩こり・めまい・耳鳴りなどに効く
対応
原因と思われる漢方薬を止める。可逆性の病態であり一定の回復が期待できると考えられています。