「期待しない」と言うマインドセット
「期待しない」と言うマインドセット
現代社会において、私たちは常に高い期待と目標を持つことを奨励されています。しかし、むしろ期待度を下げるという考え方(マインドセット)が私たちの生活に意外な利点をもたらす可能性があるのです。
2022年6月22日に講談社から「講談社+α新書」シリーズの一冊として出版された「絶対悲観主義」という書籍が存在します。この本は経営学者の楠木建氏によって書かれましたが、常に最悪の事態を想定し、それに備えるというマインドセットを推奨しています。
本書では、著者が提唱する「絶対悲観主義」という仕事の哲学について詳しく説明されています。この考え方は、何かに取り組む際に「まあ、うまくいかないだろう」と期待値を下げつつも、「とりあえずやってみるか」と気楽に行動することを推奨しています。
楠木氏によれば、絶対悲観主義とは「自分の思い通りにうまくいくことなんて、この世の中には一つもない」という前提を持って仕事をすることです。この考え方は、単なる悲観主義とは異なり、結果に期待しないことで不安を減らし、目の前の仕事に気楽に取り組めるようになるとされています。
常に最悪の事態を想定し、それに備えるというマインドセットには、次のような利点があります。
- 心理的な準備:最悪の事態を想定することで、実際の結果がそれほど悪くなかった場合、安堵感を得られます。
- 問題解決能力の向上:潜在的な問題を事前に考えることで、より効果的な対策を立てられます。
- レジリエンスの強化:困難な状況に直面しても、それを予期していたため、より冷静に対処できます。
- ストレスの軽減:特定の結果を期待しないことで、不必要な不安や焦りから解放されます。
- 柔軟性の向上:固定観念にとらわれず、状況の変化に柔軟に対応できるようになります。
- 感謝の心の育成:期待せずに得られたものに対して、より深い感謝の念を抱けるようになります。
- 意思決定の質の向上:過度の楽観主義に惑わされず、より現実的な判断ができるようになります。
- 人間関係の改善:他者に対する過度の期待を持たないことで、より寛容で理解のある関係を築けます。
- 自己成長の促進:失敗を恐れず、新しいチャレンジに積極的に取り組めるようになります。
しかし、絶対悲観主義にも、以下のようにいくつかのデメリットや潜在的な問題点が考えられます。
- モチベーションの低下:常に最悪の結果を想定することで、新しいことに挑戦する意欲が削がれる可能性があります。
- 機会の逃失:過度に悲観的な見方をすることで、実際には良い機会を見逃してしまう可能性があります。
- 自己成長の制限:失敗を過度に恐れることで、自己成長につながる経験を避けてしまう可能性があります。
- 周囲への影響:絶対悲観主義者の態度が、チームや組織の雰囲気にネガティブな影響を与える可能性があります。
- 創造性の抑制:常に最悪のシナリオを想定することで、革新的なアイデアや解決策を生み出す創造性が制限される可能性があります。
- ストレスの増加:常に最悪の事態を想定し続けることで、長期的には精神的なストレスが蓄積する可能性があります。
- 人間関係への影響:常に悲観的な態度を取ることで、周囲の人々との関係性に悪影響を及ぼす可能性があります。
これらのデメリットも認識しつつ、絶対悲観主義の考え方を適度に取り入れることが重要でしょう。
結論
「絶対悲観主義」と「期待しないというマインドセット」は、一見ネガティブに思えるかもしれません。しかし、これらの考え方を適切に取り入れることで、私たちはより柔軟で、しなやかで回復力に富む生き方を実現できるはずです。期待度を下げることは、逆説的に、人生の質を高める可能性を秘めていると言えるのではないでしょうか。