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dokusyo/2015-09-04

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Tag: 読書 書評

「元型論」C.G.ユング著

訳者の解説を読めば元型や集合的無意識のあらましが分かってしまうので、ユング信奉者でなければ本文は読まなくていい?

いえいえ、中身は結構、今風です!

①元型とは何か?
・世界を認識する遺伝的に持っている生得的イメージパターンであり、本能行動を導く。
・具体的事物に対する解釈パターンではなく、各元型にマッチした状況が生じると発動しはじめ、それが阻害されると病的反応を作り出す。
・本能は行動を、元型は知覚や認識を司る。
・神話や宗教伝承のモチーフは、それに対応する人間欲求があまねく存在しているからと想定される。
・万人に共通なもの。

②集合的無意識とは何か?
・元型+本能
・遺伝により存在するもので、本質的には元型により構成される。

③プシケ・ゼーレ・アニマ
・キリスト教
→ゼーレ=プシケー
・ユング
→プシケー=ペルソナ+ゼーレ(アニマ)
・ペルソナ
→外に向けている人格的構え
・ゼーレ(アニマ)
→内に潜む多くは無意識の心的構え

④母親元型の概略
・優しくかつ恐ろしい
・母親コンプレックス
④-1「息子」→「同一化or反抗」×「性的牽引or反撥」
.......同性愛→異性=母親
.......ドン・ファン型→どの女性にも母親を求める
.......性的不能→?

④-2「娘」→「強まるor弱まる」
.......母性本能の肥大→「母性の肥大」→エロスが母子関係としてのみ発達→支配力↑
.......母性本能の消失→「エロスの過剰」→近親相姦、母親への嫉妬、母親を凌駕することへの駆動
.......異性へのエロス障害→「母親との同一化」→自己存在を母親に投影→母親につき従う→母親を専制君主的に操作する
.......世話する特性の形成不全→「マイナスの母親コンプレックス」→ただ反抗する反対することが目的→無愛想、不平、不満

⑤結局、どんな思想があるのか?
・子供の心への影響は、個人的な母親よりも、個人的な母親に投影された元型が病因となる。
・神経症は幼児的空想の独特な発達による。
・異常な空想の内容は、個人的な母親には部分的にしか関わりを持っておらず、実在の母親の性質を遥かに超える中味を含んでいる。

⑥アニマとは何か?
・意識の背後にある、心的作用のア・プリオリなもの。
・妖しい女性的な存在。
・それを未開人は外界に投影。
・それを古代人は女神や魔女として投影。
・中世人は聖母や母なる教会に投影。
・現代人は個人的誤解や最悪の向こう見ずとして発現する。

⑦アニマor元型のモチーフ
・神々のシジギー(ペアをなす男女の神々)。
・両性具有の元型。
・母親元型。

【総括】
①ユングの集合的無意識は、いたって今風!であり、コッホらのゾンビシステムやトノーニらの統合情報理論などとも読み換えられる!

②イメージが遺伝するのではなく、イメージを作り出す可能性が遺伝するというくだりなど、現代の遺伝概念そのものではないかな?

③同性愛を病的倒錯であるとする見解は大いに疑問である!というところなど大いに現代的じゃないか!

④やはりユングも天才だ!

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