躁うつ病に抗うつ薬は効果なし?
躁うつ病に抗うつ薬は効果なし?
躁うつ病は躁状態とうつ状態が繰り返される病気ですけど、躁うつ病のうつ状態に抗うつ薬が有効かつ安全であるかは議論のあるところです。急性期にある躁うつ病患者に対する「気分安定薬または抗精神病薬の単独投与」と「抗うつ薬の併用」で、有効性、躁転(うつ状態が躁状態に反転すること)リスクおよび忍容性(副作用)に違いがあるかを調査したメタ解析研究(信頼性の高い研究方法)があったので紹介します。上海交通大学医学院(中国)の研究です。
対象は18歳以上の急性期にある躁うつ病のうつ病相にある患者です。抗うつ薬を用いた場合と用いなかった場合の治療の有効性および有害事象(副作用)を比較した結果、躁うつ病患者に抗うつ薬を使った場合、
- 全体としては抗うつ薬の有効性は確認されなかった
- 抗精神病薬に抗うつ薬を併用すると少しだけ有効であった
- 気分安定薬に抗うつ薬を併用しても有効性は確認できなかった
このように抗うつ薬使用が躁うつ病のうつ症状に対して意味のある改善効果は確認できないと考えられたけれど、抗うつ薬を使用は
- 躁転リスクを増やすことはなかった
- 効果が不十分であるとの理由で治療を中断してしまうことは少なくなった
とのことも判明した。
私見
個別のケースでは抗うつ薬の使用が躁うつ病のうつ状態の改善をもたらす可能性はあるものの、全体としてみるうと、躁うつ病に抗うつ薬を使用する意味は少ないという結果は、臨床経験とは反するように思えます。抗うつ薬による躁転の心配も短期間であればそれほど気にしなくてもいいというのは同意できる内容ですね。
情報源
Yuliang Hu,Adjunctive antidepressants for the acute treatment of bipolar depression: A systematic review and meta-analysis. Psychiatry research. 2022 Feb 22;311;114468. pii: S0165-1781(22)00082-8.