あがり・うつ・不安・不眠の方々へ 赤坂心療クリニック ℡092-737-2660

抗うつ薬に優劣?

抗うつ薬に優劣?

Tag: 抗うつ薬 優劣 効果 副作用 続けやすさ
イギリスの研究です。
The Lancet, Volume 373, Pages 746 - 758, 28 February 2009 より

12種類の抗うつ薬について、世界で行われた臨床試験から信頼性の高い117の研究を選択し統計学的に検討したところ、投与8週間後の効果と副作用のため投薬を中止した割合(続けやすさ)について以下のような結果が得られたとのことです。

効果の順位(日本で発売中)は、以下のように記載されています。

1 ミルタザピン (レメロン、リフレックス)
2 エスシタロプラム (レクサプロ)
3 ベンラファキシン
4 セルトラリン (ジェイゾロフト)
5 シタロプラム
6 ブプロピオン
7 パロキセチン (パキシル)
8 ミルナシプラン (トレドミン)
9 フルオキセチン
10 デュロキセチン (サインバルタ)
11 フルボキサミン (ルボックス、デプロメール )
12 レボキセチン

この結果について、コメントは控えますが、極端な疑念は感じません。

続けやすさの順位(日本で発売中)は、下記のとくでした。

1 エスシタロプラム (レクサプロ)
2 セルトラリン (ジェイゾロフト)
3 ブプロピオン
4 シタロプラム
5 フルオキセチン
6 ミルナシプラン (トレドミン)
6 ミルタザピン (レメロン、リフレックス)
8 ベンラファキシン
9 パロキセチン (パキシル)
10 デュロキセチン (サインバルタ)
11 フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)
12 レボキセチン

これらを総合した順位は、以下のごとくと記載されています。

総合順位(日本で発売中)
1 エスシタロプラム (レクサプロ)
2 セルトラリン (ジェイゾロフト)
3 ミルタザピン (レメロン、リフレックス)
4 ブプロピオン
4 シタロプラム
4 フルオキセチン
4 ミルナシプラン (トレドミン)
4 ベンラファキシン
9 デュロキセチン (サインバルタ)
10 パロキセチン (パキシル)
11 フルボキサミン (ルボックス、デプロメール)
12 レボキセチン

以下、私見を述べます。あくまで私の臨床経験からのもので、客観的論文と同等に重み付けしないで下さればと思います。

エスシタロプラムは発売間もないこともあって、日本人での副作用特性ははっきりしませんが、初期の吐き気などの消化器症状がクリアできれば、増量しなくても効果が得られる可能性があり、増やさなくていいという点では使いやすい印象です。果たして、副作用はどのくらいのものでしょうか。パロキセチンに比べ消化器症状の発現が多少多かったとのことですが、今後、パロキセチンに取って代わる可能性を秘めたお薬であると言えるかもしれません。

セルトラリンは多少副作用が少ない印象で、効果もそこそこ。適用外ですが社会不安障害にも効くような印象です。初期投与量から4倍まで増やさないといけない場合があり、患者さんにとっては複雑な気持ちになるようです。

ミルタザピンは、本研究報告と同様、効果が期待できるという点では実際の臨床でもその通りではないかと思われます。しかし、眠気が異常に強い点と、食欲亢進作用が顕著で、勤務している方と太るのを嫌がる女性には使いにくい印象です。眠気よりも食欲亢進体重増加により変薬する例が多いというのが現状です。また、少数ですが、衝動性が亢進してイライラして家族とトラブルを生じるようになったり、死にたい気持ちがかなり増幅するという患者さんがおられ、短期で中止するという経験をしました。患者さんにとっては、確かに効果感はあるのですが、継続服用について、製薬会社のMRさんが言うような、眠気よりも、「衝動性の亢進<<食欲亢進」の故に変薬を申し出る患者さんが多い印象です。

デュロキセチンは、ミルナシプランの強化版のような印象を使用前には持っていたのですが、服用は朝食後と指定されているにもかかわらす、眠気が強くて夕食後か寝る前に服用方法を変更する、もしくは変薬する方がかなり多いのが現状です。他のSNRIやSSRIにくらべ三環系に近いような副作用が出るようです。だた、副作用が出ていない方には、1日1回投与ですむという点で使いやすいといえるでしょう。

患者さんごとに合うお薬と合わないお薬があり、個々に調整していくことで、それぞれのお薬のよさを引き出せると思われます。

お薬の薬理作用のみでなく、投薬にともなう説明と、心理的ストレス要因を解き明かすことで、お薬の効果も変わってくるようです。

心療内科精神科は、お薬の薬理作用だけでは、十分な効果は出ない、特殊な心療領域であるようですね。

powered by HAIK 7.3.7
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional