チックの治療
チックの治療
Tag: チック
一般診療でご相談は少ないのですが…
チックとは、体の一部の不規則な速い動きや発声が、意図せず、突発的に繰返す状態で、人からみれば奇異な状態であるため、他者の反応から自尊心の低下やなど精神面への影響がでることも珍しくありません。
運動性チックと音声チックがあります。
運動性チックには、単純性(瞬きや肩を挙げるなど)、複雑性(物にさわるとか物を蹴るなど)があります。
単純性音声チックは、発声、咳払いなど、複雑性音声チックは汚言(人前で、汚い言葉を言う)、反響言語(人の言ったことを繰返して言う)などです。
チック障害は、一過性チック障害(持続が4週間以上12カ月未満)、慢性チック障害(12カ月以上持続し、3カ月以上チックが消失することがない)、トゥーレット障害(12カ月以上持続し、多彩な運動チックと一つ以上の音声チックがある)に分類されます。
チックの発生メカニズムは、「脳の大脳基底核・視床・皮質回路の異常」「線条体におけるドパミン活性の低下とそれに続発したドパミンD2受容体の過感受性」が考えられています。
また、遺伝的素因があるともいわれています。
ドパミン神経は環境の影響は受けませんが、大脳基底核・視床・皮質回路には環境の影響を受けるセロトニン神経も入ってきており、チックにはセロトニン活性低下も影響するとされています。
トゥーレット障害では40%程度にAD/HDを合併するといわれ、強迫性障害も合併しやすいようです。
治療としては、ドパミン活性低下によるドパミン受容体の過感受性およびセロトニン活性低下への薬物療法が中心となります。
前者には、ドパミン受容体遮断薬のハロペリドール(セレネース)やピモジド(オーラップ)が使用されます。
ドパミン受容体遮断薬のうち、前頭葉のドパミン機能低下が少ないとされるリスペリドン(リスパダール)は、比較的安全と考えられています。
強迫性障害が並存している場合、あるいは強迫性が基盤にあるような複雑チックでは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やイミプラミン(トフラニール)が使用されています。
てんかん治療薬である、クロナゼパム(リボトリール)やカルバマゼピン(テグレトール)、抗不安薬のクロルジアゼポキサイド(バランス)、降圧薬の塩酸クロニジン(カタプレス)などが効果的な場合もあります。
チックは、精神科でそれほどよく見られる疾患ではありませんが、自尊感情に大きな影響を与えるため、カウンセリングなどが必要なことも多いようです。
困っている方は、精神科で相談してみるのもよいでしょう。
(注)ちなみに、塩酸クロニジンは、保険適用は高血圧症のみですが、手術前後やモルヒネの効かない癌の痛みなどにも使われます。