つぶやき一行/2021-12-07
Tag: 今日の「へーっ」
人を操る「プライミング効果」とは?
先に体験したことが、その後に生じる解釈や決断あるいは行動に影響を与えるというのが、私なりに解釈したプライミング効果です。自己啓発本にある「引き寄せの法則」であるとか「アファメーション」であるとか「ヴィジュアリゼーション」でるとかいうものの基盤となる心理機制かもしれません。
本来、プライミング効果とは、月浦崇氏(京都大学人間・環境学研究科認知科学分野)によると、先に人間の脳に入力された刺激(プライマーという)が、その後に入力された刺激(ターゲットという)の処理を促進または抑制する効果のことを指す心理学用語とのことです。なお、プライミング効果には、知覚レベルで生じるもの(知覚的プライミング効果)と意味レベルで生じるもの(意味的プライミング効果)があるそうです。
また、宇都出雅巳氏(トレスペクト教育研究所)によれば、記憶もまたプライミング効果の発生メカニズムに影響を与えているとしています。氏が東洋経済オンラインで紹介している心理実験からそう言えると言うのです。氏が紹介した実験は、ニューヨーク大学の研究者によて実施されました。先行して脳に入力された意味刺激が、その後に体験する状況への行動に影響を及ぼすということを示すものでした。
実験のおおまかな内容と結果は、次のようなものです。
- 大学生を2つのグループにランダムに分ける
- 大学生にランダムに並べた単語の書かれたカードを見せる
- そのカードを使って文章を完成させる
- 1つのグループには「無礼」「強引」「大胆」「妨げる」「邪魔する」「侵害する」と「困らせる」いう単語の書かれたカードを使わせる
- もう1つの別のグループには「礼儀正しい」「思いやりのある」「我慢強く」「尊敬する」「感謝する」「従う」「丁寧な」という単語の書かれたカードを使わせる
- その後、別室に行って担当者と実験について話をするように指示される
- 担当者はサクラとして演技している学生と話し込んでいて実験について話をすることができない状況に置かれる
その結果はどのようなものだったでしょうか。結果は、
- 「無礼な単語群」カードで文書作成テストを行った学生は平均およそ5分で2人の会話をさえぎった
- 「礼儀正しい単語群」カードでテストを行った学生のうち82%の人が10分経っても会話をさえぎらなかった
私見
この実験結果をどのように解釈すればいいでしょうか。これは記憶が関与しているというよりも、単語の意味あいから生じる感覚が情緒的認知に影響して、行動に影響を与えたということではないかと思うのです。単語にはそれに引っ付いて来る情緒的な意味合いがあります。たとえば、「殺人」という単語と「赤ちゃん」という単語を目にした時に、心に生じる感覚は随分と異なると思うのですが・・・
先に挙げた実験では、
- 無礼意味の単語群刺激の入力→情緒的無礼感覚の賦活化→無礼脳モード化→話を遮る行動
- 礼儀正しい意味の単語群刺激の入力→情緒的礼儀正しい感覚の賦活化→礼儀正しい脳モード化→話を遮らない行動
といった無意識のメカニズムが働いての結果であると思います。みなさまはどうお考えになるでしょうか?