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最新医学の情報乱れ読み/2012-04-20

Tag: 老化

うつ病やストレスが老化を加速?

 うつ病やほかの精神疾患は心の病であるのと同様、からだの病であるとする研究報告が増えている。  

精神的ストレスやうつ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を長期間抱えている人は、年配者に多い病気を早い段階で、またより重篤に患う傾向にある。

たとえば脳梗塞、痴呆、心臓疾患、糖尿病などだ。

最近の研究は細胞のなかで起こっていることがその原因である可能性を示している。  

科学者は加齢とともに染色体に起こる変化と同じものが大きなストレスやうつ病を経験した人にも起こることを発見している。

「老化の加速」として知られるこの現象は、ストレスやうつ病を単に精神的な状態としてではなく、からだ全体の病気(といっても、最もわかりやすい症状は「気分」だけかもしれないが)としてとらえ直そうという動きをもたらしている。  

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の精神医学教授、オーウェン・ウォルコウィッツ氏は「知識を深めるにつれて、私たちはうつ病を『精神疾患』や、まして『脳の病気』と考えることは少なくなり、むしろ全身的な病気と考えるようなった」と言う。  

肉体と精神的な状態を結びつけるメカニズムをより良く理解することはいつか、精神疾患の診断と治療を行う上で、また記憶障害を抱えた人の認知力を改善することにも役立つと証明されるだろうと、ウォルコウィッツ氏は言う。  

「老化の加速」に関する初期の研究では、デューク大学の研究者らが約20年前、うつ病を抱える年配者の脳スキャンを実施し、うつ病を患っていない人に比べて、かなり早いスピードで加齢による脳の縮小が進んでいることがわかった。

研究者によると、この「老化の加速」の理由は喫煙やダイエット、運動不足といった不健康な生活習慣だけではないとみられる。  

細胞レベルにおける老化の加速の理由は何かを探る最近の研究はテロメア(染色体の末端にある小粒)に焦点を当ててきた。

テロメアは加齢に重要な役割を演じていると長い間考えられてきたものだ。

加齢に伴いテロメアは短くなり、短くなったテロメアは病気のリスクの増大や寿命に関係がある。

UCSFによる研究で、短くなったテロメアはうつ病や子どもの頃のトラウマ、またほかの心理状態に関係があることが発見された。

PTSDの持病を抱えた成人43人(平均年齢約30歳)と、健康な47人を対象とした研究によると、PTSDを抱えたグループのテロメアは健康な人より短くなっており、それは年齢換算で推定4.5歳分もの老化の加速と同じだったと、ウォルコウィッツ氏は指摘する。

この研究結果は昨年の医学専門誌「バイオロジカル・サイカイアトリー」に掲載された。  

別の研究でも、スウェーデンの科学者らが同様の結果を発見した。重いうつ病患者91人と健康な451人を対象にした研究で、ウメオ大学の研究者らは短くなったテロメアがうつ病や、長い間に受けたストレスと関係があると結論づけた。

研究は同誌に2月に掲載された。

ただ、どの程度深刻な精神的経験がテロメアの長さに影響を及ぼすかについては、さらなる研究が必要だとしている。

研究のなかには、たった2回の大きな精神的落ち込みが細胞の構造に十分影響を及ぼすと示唆するものもある。

精神的な落ち込みを経験すればするほど、テロメアの長さに与える影響も増えるとする研究も複数ある。  

デューク大学の生物学的精神医学科のムラリ・ドレイスワミー教授はテロメアの研究には関わっていないが、この研究分野における「聖杯(皆が探し求めているもの)」はうつ病やストレスがからだに影響を及ぼす分子メカニズムを見つけることだと指摘する。

これがわかれば、加齢による病気がどの程度、生まれつきのものか、そうではないのか、またその進展を反転させることができるのかについて、ヒントを与えてくれる一助になると、同氏は言う。

研究者はまた、ストレスを抱えた人が全員テロメアを短くしてしまうわけではない理由を求めている。

テロメアの長さは、人がストレスを感じたり、うつになったりした際に大量に分泌される特定のストレスホルモンや炎症性の分子に影響されていると考えられている。

一方、テロメラーゼとして知られる酵素はテロメアが短くなるのを防ぐ。  

UCSFのウォルコウィッツ氏によると、老化防止の働きをするアンチオキシダントや抗炎症性たんぱく質の水準が高いなど、生物学的に老化に強い要素を生まれつき持っている人もいるようだという。

個人がストレスをどう経験し、どう対処し、またどの程度広い世界観をもっているかということもテロメアの長さに影響すると考えられている。

2009年、UCSFの研究者らは性格的特徴である悲観主義がテロメアの短縮化と相互に関係し、ストレスに結びつく免疫システムによる化学物質の分泌を増やしたことを発見した。  

別の研究では、50人の女性がストレスを引き起こすとして知られる基本的な実験課題を与えられた。

それは自分の長所と短所についてスピーチしたあと、難しい数学の問題を大きな声で解く、というものだった。

そのなかの数人の女性は長期に病気を患っている子どもたちの介助士であり、そうでない人よりはストレスを抱えているものと思われた。

しかしテロメアの長さは介助士であるかどうかに関係ないようだった。

その代わり、課題を発表しなければならないことに高いレベルのストレスを感じたと報告した人のテロメアのみ、短くなっていた。

この人たちは日常直面する問題で、他の人より多くのストレスと感じやすい人たちだろう。

研究はUCSFの博士研究員、イーファ・オドノバン氏が率いたもので、英医学誌「Brain, Behavior, and Immunity」(脳、行動、免疫)のウェブサイトに3月、掲載された。  

研究者によると、ストレスやうつがテロメアの長さに影響を及ぼすには数カ月、もしくは数年かかるという。

しかし、テロメラーゼの活動レベルはもっと早く影響を受けるかもしれない。

前立腺がんの患者24人を対象に試験的研究を行ったカリフォルニア州サウサリートにある非営利研究グループ、予防医学研究所の創立者、ディーン・オーニッシュ氏は血球中のテロメラーゼの活動が患者の生活様式を変えた3カ月後に増えたことを示した。

またコレステロール値と心理的な苦痛の低下もみられたという。  

同研究ではテロメアの長さは計測しなかったものの、研究者は患者のテロメラーゼの活動が活発化したことで、細胞レベルでテロメアを守ることにつながったのではないかと示唆した。

同研究はUCSFの研究者と合同で実施され、英医学誌「ランセット・オンコロジー」に2008年掲載された。  

抗うつ剤を投与されたうつ病患者のなかで、テロメラーゼの水準が高くなった人もいた。

これらの患者はうつ病の臨床効果でも改善がみられた。

しかしほかのうつ病患者では投薬後も臨床効果での改善はみられず、酵素の水準の増加もなかった。

これは2月に発行された米精神医学誌「モレキュラー・サイカイアトリー」に掲載された小さな研究で明らかになった。  

心理的状態がテロメアの長さに影響を及ぼすとみられる研究が発表された後、UCSFの研究者らは患者の細胞で起こっていることの情報がその患者の心理を変えることに利用できるかどうか見極めようとしている。

現在進行中の研究で研究者は患者に血液サンプルから検知することができるテロメアの長さを他の健康な同年齢の人の平均的な長さと比べた場合にどう違うかを伝えている。

この情報を与えられた患者がより健康的な生活スタイルを実践するかどうかを研究者は追跡している。 

記者: Shirley S.Wang

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