最新医学の情報乱れ読み/2012-06-03
Tag: 恐怖
恐怖条件付け
Fear Conditioning: Not Just for Animals
恐怖は脅威に対する情動的生理学的な反応。
多くの精神疾患において発動している。
Johansenらは、動物を用いた聴覚性恐怖条件付け試験をレビュー。
聴覚性恐怖条件付け試験では、条件刺激(CS)の“音”に無条件刺激(UCS)の“ショック”を組み合わせた学習を行い、CSによって恐怖反応(すくみ行動)が惹起される
恐怖記憶の獲得には聴覚連合野の可塑性がかかわっている。
この過程では、扁桃体の弱い前シナプス入力および強い後シナプス入力の同時発生が起こるとシナプス入力が増強される。
その結果、中脳水道周囲灰白質への結合を介して、CSによる神経細胞の強力な脱分極が惹起され、視床下部外側野を介した自律神経系の活性化、および視床下部室傍核を介したストレスホルモンの放出が引き起こされる。
これらのシナプス結合は神経伝達物質受容体であるcoincidence detector、および電位依存性Caチャネルにより強化され、扁桃体のGABA作動性介在ニューロンによって減弱される。
扁桃体において新たに形成された恐怖記憶の固定化には蛋白合成が必要。
固定化された後でも、恐怖記憶は不安定化することがある(再固定化)。
CSへの再曝露は恐怖記憶を再活性化し、これらの関連に新たな情報が取り込まれる。
初回の固定化と同様に、記憶の再固定化は扁桃体における蛋白合成に依存。
再固定化はN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体、ノルアドレナリン作動性シグナル伝達、プロテインキナーゼ、複数遺伝子の発現亢進などが関与したある種の新たな学習であり、恐怖記憶が減弱する。
この記憶はUCSへの再曝露で再燃したり、時間経過で自然発生的によみがえることがある。
Johansen JP et al. Molecular mechanisms of fear learning and memory.Cell 2011 Oct 28; 147:509.