最新医学の情報乱れ読み/2012-06-10
Tag: 脳科学
努力できる人は脳が違う?
米国ヴァンダービルト大学マイケル・トレッドウェイらの研究。
Journal of Neuroscienceに発表。
人は、何かをやり遂げようとする「動機の維持」と、逃れたいという「動機の放棄」が葛藤状態となっている。
脳内で生じる「動機の維持と動機の放棄」の綱引きを検索するため、被験者25人に、自分の利き手で7秒間に30回ボタンを押す「単純課題」か、利き手でないほうの小指で21秒間に100回ボタンを押す「難しい課題」のどちらを選ぶか選択させ、「難しい課題」の報酬は「単純課題」よりは高いが確実に得られるとは限らないということも告げられ、被験者がボタンを押す間、PETスキャンで脳の変化をモニタ-した。
結果、「左線条体」と「前頭前皮質腹内側部」のドーパミン作動性活性が高い被験者の方が、努力する意欲が高かった。
この違いは、報酬を得られる確率が低い場合に特に顕著に観察された。
脳のこれらの領域は、「損得勘定」と結び付けられ、努力がその犠牲に見合うかどうかを自動的にかつ無意識に計算している。
努力に見合わないと自らが判断した場合、努力を維持させるのが難しくなっていく。
さらに、「島皮質」のドーパミン活性と、努力しようとする意欲との間には、逆の相関関係が存在した。
「左線条体」と「前頭前皮質腹内側部」の活性化により、脳内に「がんばって!」という意欲を、「島皮質」の活性化が「嫌なことはやめよう!」と意欲を削ぐ可能性が考察される。
「島皮質」のドーパミン作動性活性が高いほど、努力の苦しみはより顕著になり、努力をやめてしまう。
「努力ができる人」は、「報酬が得られるかどうかわからない不確実な可能性」しかなくても、そうでない人より「快楽(左線条体と前頭前皮質腹内側部のドーパミン活性化)」が生じ、「不満(島皮質のドーパミン活性化)」に鈍感でいられるという脳の持ち主であることが示唆された。