最新医学の情報乱れ読み/2012-06-20
セロトニンとストレス
幼若期のストレス曝露が、成熟期におけるセロトニン受容体遺伝子の発現亢進を引き起こすという。
セロトニン(5-HT)トランスポーター遺伝子多型は5-HT神経伝達の欠損をもたらし、ストレス反応の異常を引き起こすと考えられる。
Benekareddyらは、成熟ラットを用いて、生後早期に受けたストレスに起因する遷延性の異常ストレス反応における5-HTの機能を検討。
生後早期のストレスとして、2~14日齢の期間に1日3時間の母親隔離(maternal separation:MS)が行われた。
対照群およびMS曝露群ともに、成熟ラットの前頭前野皮質において、拘束ストレスによって5-HT2受容体により調節される前初期遺伝子(immediate early gene:IEG)Arc の発現が誘導された。
拘束処置を繰り返した場合、正常に養育されたラットではArc 誘導の馴化が認められたのに対し、MS曝露ラットでは馴化が起きなかった。
MS曝露ラットでは細胞内シグナル伝達および興奮性シグナル伝達に関連しているいくつかの遺伝子の転写物に変化がみられ、前頭前野皮質における5-HT2A mRNAレベルが上昇した。
5-HT2受容体拮抗薬であるケタンセリンをMS曝露中に投与したラットでは、成熟期における不安行動の発現が抑制され、慢性ストレスに対するArc 反応パターンの正常化が促進され、前頭前野皮質におけるシグナル伝達系および5-HT2A受容体遺伝子発現が正常化した。
Benekareddy M et al. Postnatal serotonin type 2 receptor blockade prevents the emergence of anxiety behavior, dysregulated stress-induced immediate early gene responses, and specific transcriptional changes that arise following early life stress.
Biol Psychiatry 2011 Dec 1; 70:1024.