こんなの病気?
一般にはあまり知られていない心の病気を紹介します。
夜間に食べてしまう病気
睡眠関連食行動障害(SRED:Sleep Related Eating Disorder)
- 睡眠後に食べてしまうという病気です。
- 食べたことを、全く覚えていないか、うつろにしか覚えていないというのが特徴です。
- そして、食べるものも、何を食べるか分からない、食べ物でないものまで食べてしまうことがあります。
- 若い成人女性に多い傾向があります。
- SREDと最も合併することが最も多いのは、睡眠時遊行症、いわゆる夢遊病です。
- 夢遊病にSREDが合併すると、SREDが症状の主体となってきますが、このよう場合には、抗うつ薬やランドセンというお薬が有効なことがあります。
- また、SRED自体には、誘発要因となっている睡眠導入剤の減量中止やストレス要因への対処などの原因的なものへの対処が重要です。
- SREDに効くお薬はありませんが、ある種の抗てんかん薬が有効であったという報告があります。
- 当院での例では、本剤が著効し、中止すると即座に再発しました。
- ただし本剤は診断が「てんかん」でなければ保険適用外となるため、診察費用も含めて全額自費となります。
夜間摂食症候群(NES:Nocturnal Eating Syndrome)
- これもSREDと同様、睡眠前後に食べてしまう病気です。
- しかし、SREDと違い、食べているということを明確に覚えているのが特徴です。
- 夜間の睡眠前もしくは睡眠に入ってからのち完全に覚醒して、耐え難い摂食欲求が生じます。
- そして、何か食べないと眠れないという状態となります。
- また、SREDと違い、NESは普通の食べ物しか食べません。
- 若い成人に多い傾向があります。
- 摂食抑制ホルモンのレプチンが夜間に分泌が抑制されやすいとの報告もあります。
SREDとNESに共通することなど
- 体重が増加する・睡眠が中断され睡眠不足になる・睡眠後の摂食を自分でコントロールできないという症状も伴います。
- 睡眠導入剤、特に作用時間の短い寝つきをよくする睡眠導入剤の使用中に発生したという報告が多いとのことですが、ストレス・喫煙・アルコール・薬物乱用・ダイエットなども誘因となるようです。
- SREDとNESは合併して発生することも多く、同様のメカニズムが関係している可能性もあるようです。
- SREDもNESも、日常臨床では珍しくはない病態ですが、疾患としては、一般にはあまり知られていない病態です。
特殊な抗てんかん薬の効果不十分な夜間摂食症候群や睡眠関連食行動障害の治療試案
①全般的ストレスマネージメントの実行
②睡眠障害(寝つきが悪いなど)がある場合は、睡眠障害障害に対する認知行動療法の施行
③睡眠導入剤を服用している場合は、睡眠に効果のある漢方薬などとの併用
④中途覚醒時に意識があって食行動が止められないなら、過食症の認知行動療法の施行
⑤肥満や衝動・ストレスに効果がある漢方薬の使用
⑥本来の自己の価値に沿った生きる目標の明確化とそこに導く行動の実践