最新医学の情報乱れ読み/2012-02-05
Tag: 統合失調症,ビタミンB6
カルボニルストレス性統合失調症
昨日の続き。
抗精神病薬が効きにくく、長期に入院して家系内に複数の統合失調症発症者がいる。
このような場合、遺伝子変異が認められる場合が多い。
遺伝子解析の結果、6番染色体短腕に、統合失調症関連の遺伝子が存在しそうな坐位として注目されている。
この坐位に存在する遺伝子の中、グリオキサラーゼ(GLO)1遺伝子に焦点を当てた。
GLO1の産生量とマウスの不安が関連することが報告されていて。、GLO1は情動など脳の機能に作用することが示唆されている。
患者のGLO1遺伝子の塩基配列を解析したところ、第1エクソンにアデニンが1個多く挿入されていることが判明。
患者のGLO1蛋白質は42個のアミノ酸しかなく(通常は184個で構成)、蛋白質の合成量も健康者の半分程度、他の統合失調症患者と比べても著しく少なかった。
GLO1の酵素活性も健康者の半分程度に低下していた。
さらに、血中ペントシジン濃度が健康者の3.7倍に上昇し、ビタミンB6濃度は20%以下に低下していた。
GLO1の酵素活性の低下のためにカルボニル化合物の解毒化が進まず、AGEの蓄積が進み、その状態を修復しようとしてビタミンB6が動員された結果、ビタミンB6が枯渇してしまったのではないかと推測。
統合失調症患者202例と健康対照者187例を対象にGLO1遺伝子を解析した結果、統合失調症に関連する1つの変異として、111番目のグルタミン酸(Glu)がアラニン(Ala)に置換する一塩基多型(SNP)が浮かび上がった。
そこで、統合失調症患者45例と健康対照者61例を対象にペントシジン、ビタミンB6の濃度を比較。
統合失調症患者の21例でペントシジンの蓄積が認められ(健康対照者の1.7倍)、21例中11例ではビタミンB6が低下。
ペントシジンが蓄積しかつビタミンB6の低下が見られる統合失調症を“カルボニルストレス性統合失調症”と定義。
発症年齢が低く、陰性症状を中心に重症者が多い。
ペントシジン濃度が高い患者では低い患者に比べ臨床症状が重症であることが分かった。
特に陰性症状のスコアが高かった。
発症年齢が低かった。
カルボニルストレスの解消が有効な治療手段となる可能性が裏付けられ、AGEに対し解毒作用を持つビタミンB6が治療薬の有力候補としてクローズアップ。
ただし、ビタミンB6にはピリドキサミン、ピリドキサール、ピリドキシンの3種類がある。
日本で販売されているピリドササールにはAGEを補足する作用がない。
AGEを補足できるのは活性型B6と呼ばれるピリドキサミンだ。
統合失調症の好発年齢は15~24歳なので、この期間だけでも投与すると大きな効果が見込まれるかもしれない。
特に、近親に統合失調症の患者がいる人などには、早期診断と予防の道が開けるかもしれない。
遺伝子解析を行わなくても、血中ペントシジンやピリドキサミンの濃度を測定することで、統合失調症の発症リスクを判定できる可能性がある。
患者群ごとに成因が異なるように見えても、そのさらに先にはfinal common pathwayが存在するのかもしれない。
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