dokusyo/2015-11-01
「潜水服は蝶の夢を見る」
JD.ボービー著。
河野万里子訳。
意識も思考も清明で感覚も犯されていない脳障害:ロックトイン症候群の著者が綴った日記風の回想録?
なお、訳者の河野万里子氏は、
サン・テグジュペリ『星の王子さま』やフランソワーズ・サガン『悲しみよこんにちは』の訳者でもあります。
意識もハッキリしており、思考も感覚も保たれている。
でも、体を動かすことも声を出すこともできない。
溜まった唾液も飲み込めず、鼻先にとまったハエを追い払うため首を動かすこともできない。
一方で、痛みも汚れた体の匂いも心の痛みもそのままに感じることができる。
なんと恐ろしい病態でしょうか!
このようなとき、思い出と空想と周囲の善意に自らの存在を投企するしかないのでしょうか?
瞑想的境地に自ずと誘われることが精神の偉大さかも知れません。
なお、本は感動的に綴られているというより、
少し控えめな書き方をしている印象です。
その控えめさに、著者の精神の強靱さと絶望の深さが、却って際立たされていると思うのですが…
この本は、映画とセットで観て読むのがいいかも知れません。
単語に使われる頻度の高い順に並べられたアルファベットを順番に読んでいく。
ジャンドゥー(ジャン・ドミニク・ボービーの愛称)が、
言いたい単語のアルファベットに来ると1回ウインクする。
こうして単語を綴っていき、文章を作ることで意思疎通を図る。
この大変さは本では実感できません。
この困難さを実感するだけでも映画を観る価値があると思います。
多少、脚色が過ぎると感じる場面があるのは致し方ないところでしょうけど…