専門医は本当に「専門」医か?
専門医は本当に「専門」医か?
いま学会単位で認定する専門医の質が問われています。
◇日本の医療 ここがおかしい Vol.2 乱立状態で質が定まらない専門医制度 学会による利益優先の創設が原因 =日経メディカル&日経メディカル オンラインの記事を読んで思ったことを少々。
多少ことなる切り口から入って見ます。
日本の専門医制度は、それぞれの学会の専門医制度担当となった先生方の努力により、さまざまな創意工夫の結果制定された制度であることには敬意を表したいというのがわたしの基本姿勢です。
その一方で、医療広告解禁により、専門医を広告に掲載できるようになってから異変が生じたのかも知れません。
広告解禁を機に多くの学会が専門医制度を乱立したとの批判があります。
各学会ごとの基準で、統一的な専門に認定基準がなく、臨床経験年数、症例経験、筆記試験、面接試問、症例レポート提出などなど、一定しない基準で各学会が専門医を認定しているという現状があります。
一部の学会の専門医を除いて、その分野での専門家という各分野での上位優良者という意味合いでの「専門」医ではなく、その分野で最低限の知識と経験を有すると想定される「専門医」(商標登録?)という、2種の専門医があるように思えます。
残念ながら、現在の精神科専門医は後者に近いといえるかもしれません。
わたしもその「専門医」に認定されていますが・・・。
また、精神科医には、厚生労働省が認定している「精神保健指定医」という公的資格があります。
学会認定の精神科専門医と厚労省が指定している指定医の兼ね合いから、他の学会より専門医の制定が遅れた経緯があります。
専門医であっても強制入院させる権限はありません。
一方で、指定医は、患者さんを医療的に保護する目的で、その人権を制限して強制入院させる法的権限があります。
わたしも、この指定医ですが、では、この指定医、精神医学のストレス関連疾患に精通したものという選考がなされるかというと、これが一切考慮されていないというのが現状です。
資格などから精神科医の専門性や能力レベルを判断するのは、非常に難しいといえます。
患者さんが医師を選ぶときにも、専門医や指定医で選んでいいかという問題が生じます。
開業している精神科医の大多数が専門医と指定医の両方の資格を有しているという現実もあります。
専門医や指定医の資格があるということは、精神科医として最低限の知識と経験があるという、秀逸さではなく最低限を示す指標と考えるのが妥当というべきでしょうか。
ではなにを基準にこの先生は専門的(優秀)かを判断するかというと、これが実際には会って診察を受けて自分に合っているかを確認しなければ分からないというのが実情です。
他の診療科でも事情は似たようなものかも知れません。
本当に医者選びは難しいものです。