魔術的期待
魔術的期待
最近、受診される方が、何か当院に期待を寄せすぎているのでないかと感じることが多くなった。
ありがたいことなのだが、患者さんにとってはよくないこともある。
それが、魔術的期待というもの。
治療者を理想化して、期待を寄せずぎ、結局期待を裏切られ、より大きな絶望感や怒りを感じてしまうものだ。
この期待に、治療者の救済者願望(この人を救いたい!この人を救えるのは自分しかいない!という自己愛的な大いなる誤解)が重なると、患者さんの被害は甚大となる。
患者さんの魔術的期待に治療者の自己愛がくすぐられ、互いに不幸な役割を演じざるを得なくなってしまう、悪循環が生じるのである。
魔術的期待を抱く患者さんのうち、長期に就労就学ができていない患者さんは、救世主願望が強い。
救世主願望とは、すべてあなたにお任せという、「私は何もしなくても、全てあなたが解決してくれる、してほしい」という願望である。
このような患者さんに、私はハッキリと「自助努力なしに治ることはできない!」と、伝えることにしている。
助けを求めに来ているのに、助けられないというのは何事かと、攻撃的になる患者さんも多い。
しかし、救済者願望の医者と救世主願望の患者さんの組み合わせ以上に不幸なカップリングは存在しない。
例え不快な感情を抱かせたとしても、以上のような悪循環の不幸を生じさせるよりは、まだましかなぁと思っている。