血液検査で抗うつ薬を予測できるの?
血液検査で抗うつ薬を予測できるの?
うつ病を治療するにあたって、どの抗うつ薬がより効果的であるかを、治療前に判断する方法は知られていません。その判断ができる可能性を示唆する研究報告があったので紹介します。関西医科大学、NTT西日本九州健康管理センタ-、福岡大学医学部精神医学教室の共同研究です。
外来で治療しているうつ病患者95人の治療開始前の血液検査で、サイトカインであるTNF-α、IL1β、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、GM-CSFの各血中濃度と、抗うつ薬であるミルタザピン(商品名リフレックスなど)と最も使用頻度が高い抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)の治療効果について調べたところ、個別のサイトカイン値と抗うつ薬をマッチングさせると、通常の倍くらいも治療効果を高められるとの結果が得られたというのです。
SSRIで治療したグループについて
- うつ病が治った人では治療前のGM-CSFレベルが、治らなかった人より有意に高かった。
- GM-CSFが0.205 pg/mLより高いと、うつ病が治る割合(寛解率)は37%から70%に跳ね上がった。
ミルタザピンで治療したグループについて
- うつ病が治った人では治療前のTNF-αレベルが、治らなかった(人より有意に高かった。
- うつ病が治った人では治療前のIL-2レベルが、治らなかった人より有意に低かった。
- TNF-α が10.035 pg/mLより高いと、うつ病が治る割合は約31%から60%に上がった。
- IL-2 が1.170 pg/mLより低いと、うつ病が治る割合は約31%から50%に上がった。
注)「治った=寛解した」「治らなかった=寛解に至らなかった」ということを表しています。
注)寛解とは症状がなくなって一応は治った状態のことで、再発の可能性が病気ではない人と同じになる根治とは異なります。
注)サイトカインとは、細胞から分泌され周囲の細胞に影響を与える生理活性物質の総称です。
注)サイトカインのうちリンパ球などが分泌し、物質として特定されているものをインターロイキン(IL)といいます。
情報源
Kiyokazu Atake, Hikaru Hori et al, Pre-treatment plasma cytokine levels as potential predictors of short-term remission of depression. The World Journal of Biological Psychiatry(DOI: 10.1080/15622975.2022.2045354), Received 20 Oct 2021, Accepted 18 Feb 2022, Accepted author version posted online: 23 Feb 2022, Published online: 09 Mar 2022.
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