コロナワクチンの心筋炎の発生リスクは?
コロナワクチンの心筋炎の発生リスクは?
SNSの情報を信じやすい若い人の間で、新不型コロナワクチンを打つと「死んでしまう!」と信じてワクチンを接種しない人がかなりいるとのことですけど、新型コロナワクチン接種後の心筋炎の発生についての調査研究があるので記事にしました。約2億人を解析した米国疾病予防管理センター(CDC)の研究です。
調査期間は2020年12月14日~2021年8月31日。対象とした人は米国の12歳以上の男女1億9千万人以上。摂取したワクチンはファイザー製もしくはモデルナ製とのこと。
結果
心筋炎報告率が最も高いのは、以下の3つの条件を全て満たしたグループだったといいます。
- 2回目接種後である
- 年齢が16~17歳である
- 性別が男性である
このような人のグループでの心筋炎の発生頻度は約1万人に1人だったようです。結構、多いですね。
心筋炎の基準を満たした1,626例を分析したところ、心筋炎患者の
- 年齢の中央値は21歳
- 症状発現までの期間の中央値は2日間
- 82%が男性
だとしています。
新型コロナワクチン接種後の7日以内に心筋炎が発症したのは、
- ファイザー製が947例
- モデルナ製が382例
新型コロナワクチン接種100万回あたりの心筋炎発生率は、
- ファイザー製
- 12~15歳男性で70.7=約0.007%
- 16~17歳男性で105.9=約0.01%
- 18~24歳男性で52.4=約0.005%
- モデルナ製
- 18~24歳男性で56.3=約0.006%
だったとのこと。なお、心筋炎を発症した1,329例中、臨床的に詳細な情報が得られた30歳未満の813例のうち、入院が必要であったのは784例(96.4%)だったようです。
注意事項
報告システムが不完全であるため、心筋炎の過少報告や過剰報告がある可能性は否定できないとの考察を行っています。
私見
論文の著者は、心筋炎という副作用はあるもののワクチンを接種することのメリットの方が大きいとしていますけど、若い人は重症化するリスクが少なく、ワクチンで入院を必要とするほどの心筋炎が起こるのであれば、「ワクチンを打たないという選択も絶対的に間違っていると言えない」かもしれません。ワクチンを接種したからといって、感染しないわけではありませんし、ワクチンを打って重症化せず無症状の場合は感染したかどうかも分からず、そのため、他人とくに重症化しやすい高齢者に感染させる可能性は消えないということになるからです。ワクチン接種した人が他人に感染させるリスクをどの程度防げるかは十分には分かっていないとは言うものの、他人への感染をある程度防止できるとの意見もあり、社会的観点からは、ワクチンを接種した方がいいと言う著者の意見に私も賛成したいと思っています。
情報源
Matthew E Oster et al., Myocarditis Cases Reported After mRNA-Based COVID-19 Vaccination in the US From December 2020 to August 2021., JAMA. 2022 01 25;327(4);331-340. doi: 10.1001/jama.2021.24110.